阪神・石井大智

【球界ここだけの話】シーズン終盤まで優勝争いを繰り広げる岡田虎2年目。石井大智投手（27）は躍進を支える救援陣の中で勝ちパターンに加わり、高い貢献度を示している。その右腕を取材していた中で、興味深い話を聞いた。 【写真】仲よくかき氷を食べる阪神・村上頌樹と才木浩人 「この前、（佐藤）輝が前川と連続ホームランを打ったときがあったじゃないですか。『構えがいいな』『重心の位置がめちゃくちゃいいな』と思っていたら、ホームランを打ったんですよ」 連弾が生まれたのは9月15日のヤクルト戦（甲子園）。1点ビハインドから同点弾、勝ち越し弾で形勢を逆転し、石井も七回に登板してリードを保った一戦だが、出番に備えてテレビモニターに目を移していたとき、快音が生まれる予感がしたのだという。これは実際にマウンドに立ったときにも生かしてきた嗅覚。記憶を掘り返し、その日の前の打席や過去の対戦と比較し、18・44メートルを隔てて向き合う打者の構えの微妙な変化に気が付けば、攻め方も変えているのだ。 かねてからできていたことではない。経験が少なかった昨季までは「『次は何を投げよう』とか『これを投げて後悔が残らないかな』とか、いろいろと考えてしまって」と胸に不安が湧くこともあったという。それが一球ごとの投球間隔の長さにつながり、テンポが悪くなった。それが今季は一変。次の一球の選択が速くなり、自分のいい間合いで腕を振れるようになった。その結果「今年は三者凡退の数というのが結構、増えたなあというのがあります」。実際に7、8月にかけては32打者連続アウトに抑えるなど好救援を継続し、27日の広島戦（マツダ）では節目の30ホールドに到達した。手にした4勝も攻撃への流れを呼んだ一つの証拠だろう。 明確なレベルアップを遂げ、昨年以上にチームに欠かせない存在へと昇り詰めてきた。このラストスパートもポストシーズンも、右腕は感覚を研ぎ澄ませながらフル回転する。（須藤佳裕）