『ブギウギ』CPが「戦争とうた」に込めた思い “覚悟”を決めた菊地凛子の撮影裏話も
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターへと上り詰めていく姿を描く。 【写真】菊地凛子の気迫が画面からも出ていたりつ子の歌唱シーン 第14週のタイトルは「戦争とうた」。“うた”をひらがなにした意図について、制作統括の福岡利武は「ちょっとニュアンスを変えたいという思いと、“戦争”と“うた”を対照的に捉えたい、という思いがありました。2つを対比させるために(漢字とひらがなで)逆を行き、さらには歌っているかのようなイメージをうまく出せればと思っていました」と語る。 第66話では、茨田りつ子(菊地凛子)が鹿児島の海軍基地に慰問へ。りつ子のモデルである淡谷のり子が特攻隊員の前で歌唱したエピソードがあることから、「ドラマでも是非やりたいと思っていました」とし、「菊地さんも普通のお客さんではなく特攻隊の前で歌うという設定で、一段と複雑な思いがあって、いいお顔で歌っていらっしゃいました」と撮影を振り返る。 「菊地さんは『実際にこういった若い方々が戦地へ向かうというのは切ないことですし、歌で背中を押していいのか悪いのか、複雑な思いですよね』とおっしゃっていました。特攻隊のみんながいい顔をしていたので、菊地さんご自身も本当にりつ子と同じ心境になったようで、当日はとても緊張感がありました」 特攻隊員のあまりに実直な姿が視聴者の胸を打ったが、演じる俳優については「いろんな事務所の人と話をして、丁寧に選ばせていただきました」と福岡。「かなり前から坊主にして、日焼けもするなど、役作りに励んでくれました。20歳前後の若い人たちですが、みなさん特攻隊がテーマの映画などを観て、気持ちを作って撮影に臨んでくれたことが嬉しかったです」と感謝した。 一方、スズ子は、楽団員とともに富山県を来訪。戦争で夫を亡くした静枝(曽我廼家いろは)と出会い、青空のもとで『大空の弟』を歌い上げる。スズ子の弟・六郎への思いが込められたこの楽曲は、かつてりつ子との合同コンサートで披露されたが、今回は「少しテンポをよくした巡業バージョン」としてアレンジも変更。さらには曲中に、六郎との手紙を読む演出が加わっている。 その理由について福岡は「手紙を読む場面はもとの歌にもありましたが、演出の福井(充広)は『ここで静枝さんへの思いをうまくリンクさせたい』と。『大空の弟』は、戦時中に歌って共感されることが多かった楽曲であり、そういったエピソードを取り入れたいという思いもありました」と説明した。 また、2023年末に放送された第13週では、村山興業の坂口(黒田有)が味方につくなどスズ子と愛助をとりまく環境にも大きな変化が。トミ(小雪)も交際を認めていないとはいえ、2人が三鷹の家で暮らすことを受け入れるなど、母としての優しさがにじむ展開となった。 そんなふうに『ブギウギ』には、ただの悪人が登場しない。福岡は「“悪い人”として登場した人を“悪い人のままにする”というところに、脚本家の足立(紳)さんや櫻井(剛)さんも面白みを感じていらっしゃらないんだと思います。また、いろいろと笠置さんについて調べながら脚本を作っていく中で、そういったキャラクターはこのドラマには合わないんだな、というのも強く感じているところではないでしょうか」と話す。 なお、村山興業の社長室に飾られた家訓「始末・才覚・算用」の額縁は、吉本興業の創業者・吉本せいをモチーフとした朝ドラ『わろてんか』から流用したもの、という裏話も。細かな美術には同作のアイテムが多く使用されているといい、「『わかる人にはわかってもらえると思います』と、美術スタッフはニヤリとしておりました」と付け加えた。 ここから物語は終戦へ。世の中が復興へと向かう中、“歌うこと”に意味を見出したスズ子がどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。ますますパワーアップしたステージに期待したい。
nakamura omame