禁煙について考える-世界禁煙デーと日本の禁煙の現状-
5月31日が「世界禁煙デー」だと知っていた方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。世界中でタバコ使用を効果的に減らすことを目的に、世界保健機関(WHO)が1989年に定めたものです。それに伴って、日本では厚生労働省が1992年より5月31日から6月6日までの一週間を「禁煙週間」としていますが、テーマは「たばこによる健康影響を正しく理解しよう」という緩やかなもので、今後10年間で行政機関と医療機関での受動喫煙をゼロにすることを目標にしています。(対照的に世界保健機関のテーマは「タバコの宣伝、販売促進活動、スポンサー活動を禁止しよう」という直接的なものです。) 「世界禁煙デー」の当日、厚生労働省などによって開かれたイベントでは禁煙大使に任命されたというプロゴルファー東尾理子さんのトークショーなどが行われました。一方、この日の横浜駅周辺では、いつものように喫煙所には人が集まり、禁煙ムードというような雰囲気は見られませんでした。横浜駅だけでなく、さまざまな場所でもいつもと変わりなく、喫煙所には人が集まっていたのではないでしょうか。 ファイザー株式会社の『日本全国のニコチン依存度チェック2012』によると、最近あなたの身の回りでタバコを吸いづらいという雰囲気を感じるか、というアンケートに対し、強く感じると答えている人は2012年の調査で22.4%です。しかしこの数字、2010年には29.9%、2008年には32.9%でした。果たして禁煙はブームなのでしょうか。また、そもそも「ブーム」と捉えることに問題はないのでしょうか。 実際の喫煙率の推移を見てみると、1972年に男性の77.6%、女性の15.5が喫煙していたのに対し、2012年は男性は32.7%、女性は10.4%と、30年で大幅に減っています。(JT『全国喫煙者率調査』) その反面、「禁煙をする気はない」、あるいは「禁煙できない」、という層もいまだ厚く、そういった愛煙家によって、たばこ税は度重なる増税にも関わらず、コンスタントに年間2兆円を越える税収があると財務省は発表しています。 ちなみに、タバコの税率は、定価の約64.5%、410円のタバコのうち264.4円が消費税を含む税金となります。ビールは42.9%、ウィスキーは24.5%ですから、かなり高い水準と言えます。急激なたばこ増税に反対する日本たばこ産業株式会社(JT)は、「日本のタバコは税構造と物価によって価格が安くなっているが、税率が低いわけではない」、としています。確かに欧米のたばこ税は小売価格の15%~50%程度に従量税を併課する国がほとんどで、日本の税率は高いといえそうです。世界ぐるみの禁煙ムードの中、1999年以降、M&Aで多角化とグローバル化を進める日本たばこ産業は、海外での基盤作りを進めて業績を伸ばしています。