「クルマ全体がひとつの塊かのようなソリッドなコーナリングを披露する」by 島下泰久 これが、ポルシェ・カイエンSクーペに乗った自動車評論家のホンネだ!!
これがカイエンの本来あるべき姿!
今年もやりました「エンジン・ガイシャ大試乗会」。2024年、大磯大駐車場に集めた注目の輸入車36台にモータージャーナリスト36人が試乗! 次期型はフルEV化されることが発表されている最後の内燃機関を搭載したモデル、ポルシェ・カイエンSクーペに乗った今尾直樹さん、島下泰久さん、九島辰也さんのホンネやいかに? 【写真9枚】かつてならカイエン・ターボと同じ4リッターV8ツインターボに格上げらさたカイエンSクーペの詳細画像はこちら ◆「SUVなのにポルシェ!」今尾直樹 SUVなのにポルシェ! そのことにあらためて感心した。ポルシェなんだから当たり前。と思うのは間違いである。かの長嶋茂雄だって、長嶋茂雄であり続けるのはたいへんだ、という意味のことを語っている。 昨年上陸したカイエンSの後期型はものすごい剛性感。というのが第一印象で、ステアリングもペダルも重めで、男っぽい。22インチの前285/40、後ろ315/35のピレリPゼロがこの剛性感に寄与しているにちがいない。エンジンが2894cc V6から3996cc V8のツイン・ターボになり、最高出力が440psから474psにアップ。 その一方、2チャンバーのエア・サスペンションを得て、バネ自体は意外とフワフワに感じる。山道に至り、ドライブ・モードをスポーツ、さらにスポーツ・プラスに切り替えると、脚が俄然引き締まり、V8がうなりをあげる。減速時には自動でブリッピングしながらダウンシフト。シートバックの背骨の当たる部分が硬くて痛い。自分の猫背のせいだ、と気づく。背筋をスッと伸ばし、丹田に気を込めることを意識してみる。リッパなポルシェ乗りになった気がしてニヤリ。 ◆「まさに原点回帰!」島下泰久 数多あるクーペSUVの中でもポルシェ・カイエン・クーペほどその姿がしっくり来るモデルは無い。何しろブランドの支柱である911がクーペなのだから、むしろこれこそが本来あるべき姿だとすら思えてくる。 試乗したカイエンSクーペは、実際に走らせても、やはり“らしさ”濃厚だった。ボディ、シャシーの剛性感は半端なく、これまたガッチリとした手応えのステアリングホイールを切り込むとクルマ全体がひとつの塊かのようなソリッドなコーナリングを披露する。 そしてエンジンはなんと、2.9リッター V6ツインターボから4.0リッター V8ツインターボに格上げされている。かつてならカイエン・ターボのスペックである。全域に力がギッシリ詰まっていて、しかも回せば吠える! この迫力に、やっぱりこうでなくっちゃと思わずニヤニヤしてきてしまうのだ。 衝撃的だったデビューから気づけば20年以上が経過したカイエン。次作はBEVにと言われる中で登場した最新作は、まさに原点回帰のポルシェらしさが改めて際立つ1台になっていたのだ。 ◆「スポーツカーとの2台持ちが似合う」九島辰也 SUVブームの中、各メーカーが自信作を投入している。グローバルでヒットすればかなりの収益になるからだ。ただ中にはコンセプトが定まっていないモデルも少なくない。快適性がウリなのか、積載性がウリなのか、スポーティな走りがウリなのか、はたまた四駆性能がウリなのか。その点カイエンSクーペはキャラがハッキリしている。あくまでもこいつはポルシェ。エキサイティングな走りが第一プライオリティであり、その後に快適性やラグジュアリーさが続く。澱みのないキャラは走り出すと気持ちがいいから惚れてしまう。 そんな走りなので、EPC会員の方ともスポーツカー談義となる。SUVに乗りながらスポーツカーについて熱く話し合うのだからこのクルマが只者でないことは想像できるだろう。単なる背の高いSUVとは根本が違う。追い越し加速は当然のこと、ブレーキの持つストッピングパワーは超絶だ。ポルシェの伝統がこんなところに垣間見られる。その意味からもこいつは2シーター・ロードスターや2ドア・クーペと2台持ちするのが似合うだろう。誰もがそんな妄想に耽ってしまう一台である。 写真=郡大二郎(メイン)/茂呂幸正(人物) (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
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