なぜか有名観光地を訪れる気にならない男一匹車中泊の旅で、見つけてしまった福井のマニアックな名所
こじらせおじさんが行くべき、福井県内のマニアックな名所はどこですか?
有名な観光地を巡る一般的な旅も、僕は基本的には大好きなのだが、車中泊をしながらの男一人旅ではなぜか、そうしたメジャーなところに立ち寄る気分にならない。 北陸地方を巡る今回の旅でも、やはりそうだった。 とはいえ旅の2日目に訪れた福井県の東尋坊は、日本有数の超有名な景勝地だ。 初訪問の場所だったし、実際に目の当たりにするとそのスケールに圧倒され、「すげー」とも思った。 だが正直なところ、心震えるほどの感動に到達することはなく、「やっぱり有名観光地は、行かなくていいかな」と再認識するのだった。 有名な場所ほど、これまでの人生で知らず知らずのうちに多くの予備知識を吸収していて、どんなところなのかおおよその見当がついているからなのかもしれない。 東尋坊のような素晴らしい名所でさえ、なんとなく「ああ、予想していたとおりだな」とか「前に行ったあそこに似ているな」などと思ってしまうのは、僕のような50代も半ばの、すっかり仕上がったこじらせおじさんのつまらぬところだろう。 もちろん家族旅行だったら、まだ人生経験の浅い娘も一緒なので、まずは教科書に載っているような有名な場所へ連れていきたいと思う。 でも、僕一人だけの旅の場合は、なるべくそんな“予備知識の実地確認”ではなく、まったく予想だにしなかったところを訪れ、まったく新鮮な驚きを味わいたい。 僕が車中泊一人旅で、無計画の行き当たりばったりにこだわるのは、そんなことを求めているからなのである。 朝に東尋坊を観光した日の午後、福井市内にある田中眼鏡本舗に行き、鯖江産メガネを購入した。 そこで僕は、いろいろお話をして打ち解けた店主ご夫妻に、 「福井で行くべき場所はどこですか? 東尋坊へは行きました。永平寺は『ゆく年くる年』で見るから大丈夫です。恐竜博物館は興味あるけど、大人の男一人で行くのはきついです。なるべくマニアックなところが希望です。さあ、どこですか? さあさあ」と詰め寄った。 まったく面倒な客だ。 優しいご夫妻をずいぶん悩ませてしまったようだが、出てきた答えは、“丹厳洞”と“大瀧神社”というものだった。 どちらもまったく知らないところであり、まさしく予想だにしない回答だったので、僕は「それですよ、それ! 求めていたのはそれ! ありがとうございます!」とやや興奮気味に礼を言い、すぐさまカーナビに“丹厳洞”と打ち込んだ。