「NHKにTBSも…」三つ巴『大奥』で本家・フジテレビに期待したい小芝風花での”らしい”愛憎劇
俳優・小芝風花が主演する『大奥』(フジテレビ系)が1月18日よりスタート。鳴り物入りで始まった“本家本元”の『大奥』だが、早くも疑問視する声が上がっている。 【カワイイ…写真あり】”大忙し”小芝風花が大手町で魅せた”ピチピチ”「パンツスーツ姿」 フジテレビは、’03年から3年続けて『大奥』を連続ドラマ化。幕末の大奥を舞台に篤姫(菅野美穂)と大奥総取締役・瀧山(浅野ゆう子)が激突。’04年『大奥~第一章~』では、誕生したばかりの大奥を舞台に春日局(松下由樹)とお江与の方(高島礼子)が対決。 ‘05年『大奥~華の乱~』では、五代将軍・綱吉(谷原章介)を巡り内山理名、小池栄子、高岡早紀がバドルを繰り広げる女同士の血で血を洗う愛憎劇が話題を集め、いずれも高視聴率をマーク。時代劇俳優と当時の連ドラ俳優を掛け合わせるハイブリットな時代劇が視聴者の心を掴み“ドル箱”企画となった。 その後も’06年には仲間由紀恵で映画化。’16年に沢尻エリカでスペシャルドラマ化、’19年には木村文乃のシリーズ完結編『大奥 最終章』が放送され、長い歴史に終止符を打った。 ところが今年、連ドラとして復活。フジテレビは、なぜ今『大奥』なのだろうか……。 「そもそも『大奥』もののルーツは、昭和に遡ります。’67年に東映映画『大奥(秘)物語』が大ヒットを記録すると、翌年テレビドラマ版の『大奥』(関西テレビ・フジテレビ系)がスタート。 最高視聴率30%を超える人気シリーズとなり、“大奥ブーム”を巻き起こしました。それから『大奥』と言えば、東映とタッグを組むフジテレビが本家本元と言っていいでしょうね」(テレビ局関係者) ところが、そんな『大奥』の歴史に風穴を開けたのが、’10年に公開され20億円の大ヒットを記録したTBSが制作を手掛ける二宮和也と柴咲コウ主演の映画『大奥』だ。 「この作品は、漫画家よしながふみさんが描いた“男女逆転”の『大奥』が原作。それだけに当時、大きな注目を集めました。’12年にも連ドラに続いて再び映画化され、“男女逆転”の『大奥』は、『大奥』の歴史に新たな1ページを刻みました」(ワイドショー関係者) しかし“男女逆転”の『大奥』に目をつけたのは、TBSだけではない。原作漫画が’21年に完結すると、そのタイミングを見計らって昨年、NHKが満を持して2クール21話にわたって“男女逆転”の『大奥』を描いてみせた。 「これまでトランスジェンダーの世界を民放に先駆けてドラマ化してきたNHK。TBSに先を越されましたが、大河ドラマなどで使ってきた美術セットや衣装を惜しげもなく使って、豪華絢爛たる大奥の世界を再現して魅せました。 キャスティングにもこだわり、将軍・吉宗役をモデルの冨永愛が演じて賞賛を浴びると、続く堀田真由が将軍・家光役で自身の殻を破る熱演ぶりを披露。さらに仲里依紗演じる将軍・綱吉の濡れ場シーンには、“攻めすぎNHK”の声すら上がりました」(制作会社プロデューサー) NHKとは思えない“攻めすぎ”の艶シーンでは、制作サイドの意図を十分に理解した上で、演じる俳優をサポートする“インティマシーコーディネーター“を初めて導入。こうしたシーンと真剣に向き合うことで、みずからの運命を呪って慟哭する綱吉(仲)の心の叫びが視聴者に伝わり、大きく心を揺さぶることに成功している。 さらに、若い男性を襲う恐ろしい「赤面疱瘡」が大流行する“よしなが大奥”と、「コロナ禍」に苦しむ現代の世相がシンクロしたことも、大きな共感を呼ぶ結果となった。 そもそも『大奥』モノの醍醐味とは、一体なんなのか。 「例えば、’16年に放送されたスペシャルドラマ『大奥 第一部~最凶の女~』(フジテレビ系)。沢尻演じるお美代は将軍・家治の落とし子だと知り、世継ぎ争いの陰謀に巻き込まれ死んだ母の復讐のために大奥に入り、将軍・家斉(成宮寛貴)の側室に。ところが男嫌いを装う奥女中・お志摩(渡辺麻友)と恋に落ち、キスから始まる艶シーンを演じる。 だが、みずからの過去を打ち明けた相手が間者と知り、お志摩をみずからの手に掛けるお美代。哀しみのあまりお志摩にすがりついて号泣するお美代の姿こそ、『大奥』が産み落とした悲劇の化身。こうした密室・大奥で行われる愛憎劇こそ、視聴者が望むツボではないでしょうか」(制作会社ディレクター) だが1月期にスタートした連続ドラマ『大奥』(フジテレビ系)は、どうだろう。 小芝が演じる役どころは、皇室の血を引く公家の娘・五十宮倫子。人を疑うことのない純真で優しい性格の倫子が10代将軍・徳川家治と政略結婚させられる。 「女性同士のドロドロも勿論ありながら、今までの大奥とはまた違った“切ない『大奥』”になる」 と、小芝自身は話している。 「昨年4本の連ドラで主演、又はヒロイン役を務め、現在放送中の時代劇『あきない世傳 金と銀』(NHK BS)にも主演。すでに時代劇にも精通している小芝風花の起用は適任です。 しかしNHKが21回にわたって描いた“男女逆転”の『大奥』に肩を並べるためには、映画『大奥(秘)物語』以来、描き続けてきたドロドロの愛憎劇を極めてこそ本家本元の『大奥』。愛憎劇が深ければ深いほど、“切なさ”も深まるものです」(前出・ディレクター) 愛憎劇渦巻く、ドロドロの『大奥』と闘うジャンヌダルク。小芝にはそういった役どころを期待したいが、果たして結果やいかに――。 文:島右近(放送作家・映像プロデューサー) バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版
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