花粉量は通常の10%以下、長野県産「クマスギ」に注目 量産態勢どう築く? 県林業総合センターが研究
長野県林業総合センター(塩尻市)は2024年度、花粉が少ない県産スギ「クマスギ」増産に向けた研究を始める。かつて須坂市や上高井郡で挿し木によって増やされた造林用品種で、一般のスギより花粉が少ない特長が約20年前に分かっていた。今年は暖冬で飛散開始が早いとの予想もある。国が対策に注力し、県も山の木を切って再び造林する方針を打ち出す中、クマスギが改めて注目されている。 【地図】長野県須坂市はどこにある?
スギはヒノキ科の常緑針葉樹で建築材や家具材に向き、各地で植林されている。クマスギは須高地域で挿し木によって育てられてきた品種の通称。クローンのため、どの木も同じ性質を持つ。県内には無数のスギが植わっているが、「○○スギ」と名が付くのはクマスギだけだ。
センターは02~05年、花粉症対策の一環で須坂市のクマスギの花粉量を調べ、県北の中野市と県南の下伊那郡根羽村のスギと比較。クマスギの花粉量はどの年も他の1割以下だった。センターは06年、クマスギが花粉症対策に有望な品種との見解を発表した。
一方、国は花粉の発生量が一般のスギの「約1%以下」の品種を都道府県ごとに探していた。08年、県内では県が造林用に接ぎ木で増やしていた4品種が該当する―と国は公表。県は花粉の少なさで突出するこれら4品種に、花粉が少ない県外の品種を交配させて種を取り、苗に育てる方針を決めた。県外の品種の選定を経て18年、種を取る試験を始めた。
しかし、林業を巡る状況は変化。クマスギの花粉量を調べた当時から山の木は育ち、県は近年、切って再び植えることを推奨している。若い木ほど二酸化炭素(CO2)吸収量が多いと知られ、温暖化対策として山を若返らせる機運も高まっている。国は23年5月、30年後に花粉発生量の半減を目指す花粉症対策を公表。県内でも植え替え需要の高まりが見込まれるが、国が示した4品種の種からの育苗にはまだ時間がかかる。
センターによると、クマスギを挿し木で増やす技術は生産者の高齢化で10年ごろに途絶えた。小山泰弘育林部長は「苗木生産は時代の要請を受けた対応。いかに早く、確実に、そして大量に山にクマスギを増やせるかが課題だ」としている。