WNBAに革命を起こしたケイトリン・クラーク。アメリカで話題沸騰中の22歳のルーキーガードが持つカリスマ性<DUNKSHOOT>
4月のWNBAドラフトでは全体1位でフィーバーに指名されると、ここまで26試合で平均17.1点、リーグ1位の8.2アシストを残し、知名度も跳ね上がっていく。プロ入り前にはナイキと8年2800万ドルの契約を結び、他球団の選手とのライバル関係や、パリ五輪のアメリカ代表メンバーから漏れたことですらも大きく取り上げられるなど、スポーツニュースでクラークの姿を見ない日はほとんどなかった。 これほどの知名度と話題性は、女子バスケ選手としては過去に例がない。その快進撃と時を同じくして、今季のWNBAの観客動員は前年比で46%アップ。フィーバーの平均観客動員はリーグ最多の1万6898人(昨季は4066人)と飛躍的に伸びたほか、TV視聴率(過去16年間は1試合もなかった視聴件数100万越えのゲームが今季はすでに17戦、うち15戦はクラークが出場した試合)、グッズ売上(前年比で500%以上の増加。ジャージーセールスのNo.1はクラーク)などで過去最高の数字を記録。年俸約7万6000ドルの新人であるにもかかわらず、リーグにセンセーションを巻き起こしたクラークはすでに革命的なアスリートと言ってもいいだろう。 「これまでもすごい選手がたくさんいて、基盤を築いてきてくれました。私から始まったことではないんです。ファンには感謝の気持ちしかありません」 本人は謙虚にそう述べているが、実際には今季のWNBAの隆盛の大部分が自身のスター性によるものであることは間違いない。 WNBAはパリ五輪の期間中、シーズンを中断。フィーバーとクラークにとっても7月17日が前半戦の最終ゲームで、8月15日の次戦まで1か月近くに及ぶブレイクが入る。ダラスでの試合はESPNによる全米中継があり、チケットはソールドアウトで大変な熱気だったが、当のクラークは夏休みが始まるのが待ちきれない小学生のようだったのも印象的だった。 「いずれ五輪出場も達成したいですね。ただ、ほぼ1年にわたってノンストップでバスケットボールをプレーしてきたので、このブレイクは私自身と私の身体にとっていいこと。ボールに触れないのは奇妙に感じるかもしれませんが、休みが待ちきれません」 笑顔でそう述べていたクラークは、物議を醸したアメリカ代表漏れにも実は安堵を感じているのかもしれない。こうして待望のブレイクを得て、リフレッシュして迎える、残り14試合のプレーが楽しみでもある。 フィーバーは開幕から11試合で9敗と厳しいスタートを切ったが、その後の15試合で9勝をあげてプレーオフ圏内入り。今年のポストシーズンは、WNBAが過去最大の注目を集める舞台になるかもしれない。 “私はマイク(マイケル・ジョーダン)やステフ(ステフィン・カリー)ではなくクラークになりたい” ウィングス戦ではそんなプラカードを掲げる10代の女性ファンも目にした。このような偶像的なアスリートが誕生した意味は、WNBAにとって計り知れないほど大きい。前述通り、現状でのクラークは平均ターンオーバーがリーグワーストとミスも多く、完璧な選手ではないが、これからどう成長していくのか楽しみな選手だ。 そして、普段はWNBAにあまり興味がなかったり、クラークの真価にも懐疑的なファンは、フィーバーのゲームを一度観ることをお勧めしたい。そのエンターテイメント性の高さに感心し、この人気ぶりにも納得がいくだろう。17日、フィーバー対ウィングス戦でクラークのプレーを見た筆者は、まさにその1人だったからだ。 文●杉浦大介
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