若きサウナー町長の挑戦「首長は経営者だ」 山形県西川町はサウナと人で町民の誇り、そして“稼げる町に”
2022年4月に財務省から転身し、人口わずか4600人台、65歳以上が占める高齢化率46%超という危機的状況に陥っている故郷の町の町長になった菅野大志さん。 過疎化を食い止める一手として、町を訪れたり応援したりしながら継続的に町と関わってくれる関係人口を増やそうと決意しました。 関係人口が増えれば、その中には移住しようという人も出てきます。そのためにはまず、町の魅力を高め、移住したいと思える町にすることに加え、その魅力を広く発信していく必要がありました。
【西川町町長 菅野大志 DAISHI KANNO】 1978年、山形県西川町生まれ。 早稲田大学卒業後、財務省東北財務局へ入局。 2006年、金融庁監督局銀行第一課。 2008年、財務省東北財務局金融監督第一課。 2018年、金融庁総合政策局地域課題解決支援チーム。 2019年、金融庁監督局総務課地域課題解決支援室。 2021年、内閣官房まちひとしごと創生本部事務局。 2022年、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局。 2022年4月、山形県西川町町長に就任
稼げる町にならないといけない
日本百名山のひとつである名峰・月山をいただく西川町は、日本でも有数の豪雪地帯で、以前から多くのスキー客が訪れていました。 しかし、スキーファンは中高年層が中心で、若年層は多くありません。「これまでほとんど接点がなかった若い層に対して発信ができれば、新しいファン層を広げられる」と菅野さんは思いつきます。 菅野「若年層は他の年代に比べて、地方移住への関心が高いことがわかっています。そこで、若い世代を新たなターゲットとして、町に呼び込み、関わりを持ってもらおうと決めました。その取り組みのひとつが、“サウナでととのう町”づくりです」
菅野さんは町長就任当初から意欲的な取り組みを行いました。道の駅に併設する町の第三セクターが運営する温浴施設「水沢温泉館」に、新しいサウナと水風呂、外気浴スペースを設置するリニューアル工事を実施。 さらに、施設だけでなく大自然の中でととのう体験を提供しようと、テントサウナを10基、トレーラーサウナ1台、バレルサウナ1台をレンタルサウナとして貸し出す事業もスタートさせました。 菅野さんが就任する前年度である2021年度の町の予算は、約54億円でした。予算規模の小さな町で、わずか1年程度でここまで充実した“サウナ環境”を整備できたのには、「サウナで稼いで町を豊かにする」という町長のゆるぎない決意がありました。 というのも、町には差し迫ってお金が必要な事態が生じていました。町唯一の総合病院である、西川町立病院の赤字が年々拡大し、存続の危機に瀕していたのです。 菅野「山形県内で、人口5000人に満たない自治体で公立病院があるのは西川だけです。過去の他の自治体の例を見ても、大きな病院がなくなったり、診療所に規模縮小したりすると過疎化が加速するのは明らかで、それだけは食い止める必要がある。 これから先も医師を確保し病院を維持していくには黒字化は必達ですが、そのために町が拠出する費用は年々増加し、23年度で4億円が見込まれています。病院を維持していくには、稼げる町になる必要があるんです」