シークレットモードで検索した方が航空券が安い説、本当?
経済学者の調査
バークレー、イェール、シカゴ大学の経済学者チームが、大手の米国航空会社の価格設定アルゴリズムを研究しました。その研究では、全体的な予約は価格に影響を与えますが、個人の興味は全く影響しないということがわかっています。実際、研究では航空会社同士のフライトの価格が価格設定アルゴリズムに影響を与えないことも示されました。 「あなたの検索行動はほとんど影響はありません。しかし、もし最後の座席を最低価格で予約した場合は、そのフライトの他の全ての人に影響を与える可能性があります」と研究に取り組んだイェール大学の経済学者Kevin Williams氏はインタビューで述べています。 Consumer Reportsでは2016年にこの都市伝説を調査し、シークレットモードのブラウザと通常のブラウザで合計372回の航空券検索をおこないました。シークレットモードでは、約7%の割合でより安いフライトが表示されましたが、同時に約5%の割合でより高いフライトも表示されていました。そして88%の割合で、Cookieの有無に関係なく航空券の価格はまったく同じでした。ということで、Cookieのせいで航空券が高く表示されるという証拠はありませんでした。逆に、Cookieのおかげで特別なディスカウントが表示されている可能性さえあるそうです。
都市伝説の始まり
1978年以前の航空券予約はとてもシンプルでした。旅行代理店に行って、フライトをリクエストし、旅行代理店のスタッフが価格本を見て料金を確認。そして、航空会社に確認の電話をかけて、予約が完了。比較したり、セールを待ったりなどがないので、これはこれでいいと思うんですが、航空券はすごく高価でした。 1978年、米国議会は「航空会社規制緩和法」を可決し、航空運賃を大幅に安くすることとなります。しかし同時にそのシステムがとても複雑になってしまうのです。突然、安い航空券をゲットするための競争が激化しました。 2000年代初頭には、ExpediaやKayakなどの多くのフライト予約サイトが立ち上がり、さらに複雑化しました。ニューヨークからロサンゼルスへの航空券を購入するための1つの設定価格ではなく、選択肢が何十にも増えたのです。そして、現在に至るまで、航空会社は需要やその他の要因に基づいて、一日中フライトの価格を変更する動的価格設定をおこなっています。これにより、常に変動するチケット価格が非常に予測不可能なったのです。Keyes氏は「この都市伝説は、航空運賃が非常に不安定であるという事実から生まれたと言ってもいいでしょう」と述べています。 航空会社は航空券を買うすべての人にそれぞれ細かく価格を調整して利益を最大化しようとがんばっているなんてことはありません。航空会社にとって重要なのは、長期的な顧客。頻繁に利用してくれる顧客のための贅沢なラウンジや特典を作ったりすることからもわかるように、経済学者はこの考慮事項が価格設定アルゴリズムに取り込まれていることを発見しています。航空券の価格には多くの要因が影響していますが、ネットでの航空券検索はその要因に含まれていないのです。