わずか30分の共演、忌野清志郎と佐野元春が初めて一緒に歌った放送禁止曲「自由に好きな曲が歌える国に生まれて幸せだと思う」波乱のアースデー・コンサート
1980年代の日本の音楽シーンを作り上げていった忌野清志郎と佐野元春。今から21年前の4月22日、二人は初めて同じステージに立った。その歴史的な共演は波乱だらけだったというが、いったい何が起きたのか…。 【画像】発売当初、大波乱を巻き起こした忌野清志郎のアルバム
『スローバラード』の代わりに『あこがれの北朝鮮』を歌った忌野清志郎
2003年4月22日のアースデーの夜、日本武道館で開かれたTOKYO FM主催の「アースデー・コンサート」(現在は『EARTH×HEART LIVE』に名称を変更)は、夏川りみの歌声で始まり、次にミッチーこと及川光博に継がれて、序盤はつつがなく進行していた。 しかし、忌野清志郎(当時52歳)が張り出しステージに登場したところから、舞台裏ではちょっとした騒ぎが続くことになる。 ボブ・ディランの『風に吹かれて』を歌った清志郎のソロ・コーナーで、3曲目に予定されていた『スローバラード』の代わりに、突然1995年に覆面バンド「THE TIMERS(ザ・タイマーズ)」として発表した『あこがれの北朝鮮』が歌われたのが発端だ。 忌野清志郎は歌い終わってから、「イラク戦争でちょっと影が薄くなったなと思って『あこがれの北朝鮮』、ひさびさにお送りしました」と、客席に向けてコメントしたが、観客の多くは唖然としていた。 そんな混乱を知ってか知らずか、清志郎は『ブーアの森』から『花はどこへいった』と続けると、「暑いぞベイビー!」と叫んだ後で、RCサクセションの人気曲『雨あがりの夜空に』のイントロを一瞬だけ弾いてみせた。 その音を聴いて期待した観客に向かい、「オーケー、今日はどうもありがとう」とはぐらかすかのように言うと、激しくギターをかき鳴らしながら、今度は『君が代(パンク・ヴァージョン)』に突入していったのだ。 『君が代』は、アルバム『冬の十字架』の1曲として1999年10月にリリースされる予定だったが、レコード会社によって発売が中止されるという過去があった。 予定になかった国家が歌われている間、ラジオから歌が聞こえないようにするために、女性アナウンサーは冷静にライブの模様を言葉で説明し続けた。 途中からは環境問題についての原稿などを読んでお茶を濁したので、『君が代』は遠くのほうから騒音のように聞こえてくるだけだった。