誰も真実を伝えないプーチンは、自ら作った「独裁の虜」
<プーチンは実は真実を知りたがった。そのための情報公開組織も作った。軍事ブロガーと懇談もした。しかし今はたった一人。ISWは「独裁者のジレンマ」と呼ぶ>
ロシアの政府高官たちは、ウラジーミル・プーチン大統領に対して、ウクライナ戦争に関する悪い報告を上げないようにしている。米有力シンクタンクはこの状況を、「独裁者のジレンマ」と表現している。【ブレンダン・コール】 【動画】プーチンが今度は「足を引きずっていた」?──これまでの病的症状も一気見! ロシアの著名軍事ブロガー、セルゲイ・コリャスニコフは、ソーシャルメディア「テレグラム」のチャンネル「ゼルグリオ」に記事を投稿し、ロシアの官僚と国防省は、プーチンにわざと情報を隠していると述べた。 米ワシントンD.C.のシンクタンク、戦争研究所(ISW)が2月4日に発表したレポートによると、コリャスニコフがこうした記事を投稿したのは、ロシア軍の失態を隠蔽しようとする保守派のプロパガンダに対する反発かららしい。ロシア軍はドネツク州ノヴォミハイリフカ近郊で1月30日、カミカゼ・ドローンで自軍の戦車T-72と戦闘用車両を多数破壊した。それを隠蔽したのだ。 ■独裁だから得られない真実 コリャスニコフによると、ロシア国内にもこうした隠蔽体質を正そうとする動きがあった。ロシアでは2004年、「ロシア連邦社会院(Civic Chamber of the Russian Federation)」という市民による諮問機関が設立された。その目的は、たとえ否定的な知らせでも正確な情報を大統領に知らせるようにすることだったが、その試みは失敗した。メンバーたちが沈黙を選んだためだ。それを受けたのはなんとプーチンだった。2011年に「全ロシア人民戦線」を設立し、正確な情報が上がってくるようにしようとしたが、この組織でもすぐにメンバーが真実を隠すようになってうまくいかなかったという。 コリャスニコフによると、ロシアの地方の役人たちもプーチンから失敗を隠そうとし、それを暴露しようとする人間を目の敵にしている。そのせいで、軍事ブロガーたちがウクライナ戦争の前線に足を運び、ありのままの戦況を伝えることはほぼ不可能になった。 コリャスニコフはまた、2024年3月のロシア大統領選挙が終われば、軍事ブロガーの逮捕が始まる可能性があると言う。プーチンが勝利する見込みの大統領選だ。 ISWは、コリャスニコフのブログ内容を吟味したうえで、「プーチンは、独裁者のジレンマに直面している」と言う。プーチンの独裁が完璧大統領選では過ぎて、部下たちは決してその意に反することを言わない。「政権そのものが、組織的にプーチンを正確な軍事的・政治的な情報から遠ざける役割を果たしている」のだ プーチンは2023年6月、厳選した軍事ブロガーをクレムリンに招いて懇談会を開いた。そして、ドローンが不足していることや、ウクライナ南部のヘルソン州でウクライナ軍の撃退に失敗したことなど、ブロガーたちの懸念に耳を傾けた。