退職理由に「一身上の都合」はダメ? 弁護士が解説する「不利にならない退職届の書き方」
●理由に「パワハラを受けたから」と書いても不利にならない?
――退職理由に「パワハラを受けたから」など、会社に不利なことを書いた場合、書いた人が不利になる可能性はありますか。 会社に不利なことを退職理由に書いたことで、辞める人が不利になるということは基本的にないと思います。 ただし、不適切なことではありますが、会社に不利なことを退職理由に書いたことで会社が退職に関連する手続きに非協力的になる可能性はあります。 万が一、そのようなことがあった場合には、それぞれの手続きに応じてハローワークや健康保険組合などに相談するのが良いでしょう。 ――このほか、退職届の書き方で不利にならないよう、注意する点があったら教えてください。 先程お伝えした通り、労働者からの申し出に基づいて退職をする場合、労働者からの一方的な意思表示で辞めるパターンと労働者と使用者との合意に基づいて辞めるパターンがあります。 そして、労働者からの退職の申し出については、使用者の同意を得なくても辞めるという強い意思を有している場合でない限り、一方的な退職の意思表示ではなく合意退職の申込に当たるとしている裁判例が複数あります(広島地判昭和60年4月25日労判487号84頁、大阪地判平成10年7月17日労判750号79頁等)。 こうした事例からすると、会社に提出した書類が一方的な退職の意思表示ではなく合意退職の申し出と判断された場合、会社の了承がないため退職が成立していないとされてしまう可能性があります。 そのため、会社の意向に関わらず辞めるという考えなのであれば、退職届を書く際は「退職願」というタイトルにしたり「退職を願い出ます」といったような、会社の了承を願い出ていると捉えられかねない表現を避けて「退職届」といった記載にしたり「退職いたします」といった記載を用いて、退職の意思を明確に表示したほうが良いでしょう。 【プロフィール】 高橋 寛(たかはし かん)弁護士 2017年弁護士登録(東京弁護士会)。日本労働弁護団、自由法曹団、東京弁護士会労働法制特別委員会等に所属。労働者側専門で多くの労働事件を担当している。 事務所名 :旬報法律事務所 事務所URL:https://junpo.org/