農村と都市の交流で多彩な試み、長野の会社「せいしゅん村」が大賞に
20年にわたり「田舎と農業を守る」と都市との共生活動に打ち込んできた長野県上田市の会社が「オーライ!ニッポン大賞」最高賞のグランプリに選ばれ、代表らが16日に県庁で阿部守一知事に報告しました。この会社は農業生産法人「信州せいしゅん村」(小林一郎代表)。観光農業、農山村体験、滞在型農業など多彩な試みで農村と都市の結びつきを追求。農山村復活の試みと成果が「全国一」の評価を得ました。
「ほっとステイ」や「ふるさと回帰予備校」事業
この大賞は、オーライ!ニッポン会議(都市と農山漁村の共生・対流推進会議)主催で15回目。全国から都市と農山漁村を結び付ける活動など92件の応募があり、上田市のせいしゅん村へのグランプリ(内閣総理大臣賞)授賞が3月末に決まりました。賞の名称は、都市と農山漁村の「往来」と、日本を元気「All right」に、という2つの意味をかけています。 井上和衛明大名誉教授(農学者)らによる審査で「ありとあらゆることを試み、その取り組み内容と実績は群を抜いている。農村体験のほっとステイは他地域のモデルに十分なり得る」との高い評価を得ました。
信州せいしゅん村は、トマト栽培が盛んだった上田市武石地区(旧武石村)が、農産物の輸入拡大などで疲弊したため、現・代表取締役の小林氏(67)が「生き残り策を考えよう」と地域に呼び掛け。1998年から地域の勉強会や情報交換会を開いてきました。 その結果、「外から多くの人に来てもらえるサービス提供型の農村を目指す」方針を決め、自分で農作物を育てて収穫、調理して食べるオーナー制度をスタート。次に耕作放棄地などをボランティアの手でそば畑にする開拓に取り組み、そば道場も開きました。
さらに2002年からは日帰りで農村生活を体験する「ほっとステイ」事業も。その後、農村への定住滞在を支援する「ふるさと回帰予備校」や研修センターも開設。 2009年には株式会社の組織とし、「前例のないことを独創的に」をモットーに農家レストラン開設、高齢者のたまり場となる農園で都市の親子との交流を進めるなど多彩な事業を進めてきました。 このうち日帰りのほっとステイは、県内7か所に広げて展開し、年間の受け入れは2万人に。せいしゅん村を農村体験で訪れる人は昨年4000人に上り、外国人も1500人以上。カナダ、台湾、オーストラリアなど20か国余から訪れます。 せいしゅん村は現在、専属スタッフ10人を含む84人で運営。小林氏は「武石に生まれて、農村を何とかしないといけないという気持ちでここまで来ました。今後は誰でも来て作物が作れるようなオープンファームにも取り組みたい」と話しています。
---------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者・編集者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説