『虎に翼』自分の弱さや劣等感を、弱い相手への攻撃でしか吐き出せない男たち。女性と同じように男性も救う力が、このドラマにはある【第3•4週レビュー】
『虎に翼』の好きなところを挙げはじめるとキリがなくて、さだまさしのコンサートのMCくらい長くなってしまいそうなのですが、数あるうちの一つとしてタイトルバックを推したいなと思います。 【画像】「こんな人間になるはずじゃなかったのに」花岡(岩田剛典)が複雑な心情を吐露するシーンも話題に。『虎に翼』3•4週の場面写真(写真5枚) 米津玄師の『さよーならまたいつか!』に乗せて、六法全書が翼を広げるように羽ばたいていく。そして、寅子(伊藤沙莉)の法衣には様々な女性たちの群像が。ひとり舞い踊る寅子は、つまずき、倒れながらも、決して瞳に意志の炎は絶やさない。やがて女性たちは手を取り合い輪になり、最後は共に踊り、希望を探すように彼方を見上げる。 寅子だけじゃない。あの時代にもいろんな女性たちがいて、それぞれが自分の場所で自分の人生を懸命に生きていた。そして、そのバトンが今私たちの手に受け継がれている。私たちは、一人じゃない。立場の異なる女性たちを結ぶ、強い連帯。 『虎に翼』とは、日本初の女性弁護士による一代記ではなく、およそ100年前のこの国を生きたあらゆる女性たちの群像劇であることが、短いタイトルバックから伝わってきます。第3・4週は、そんな寅子以外の女性たちの人生にスポットが当たりました。
異なる地獄を持つ者たちが手を取り合うことで世界は変わる
特に大きくクローズアップされたのが、寅子の同級生であるよね(土居志央梨)と梅子(平岩紙)。キーワードは戦うことです。 貧しい家庭に生まれ、唯一の心の拠り所だった姉も15歳で女郎として売り飛ばされたよねは、自らの人生を守るために家を飛び出し、女であることをやめ、姉の紹介でカフェでボーイとして働きはじめます。けれど、最愛の姉が置屋の主人から金を騙し取られていたことが発覚。なんとか奪い返そうとするも、無知なよねには何もできません。己の無力さに打ちひしがれていたよねの前に現れたのは、一人の男性弁護士。法律の専門家である男は、代わりに姉の金を取り返してくれると言う。しかし、その代償はよね自身の体だった。 女であることから逃れたいのに、女であることしか自分には武器がない。だから、よねは力を求めた。弱者を踏みにじるすべての者を屈服させ、あらゆる理不尽に対抗し得る力を。よねは、戦うために法を学びに来たのでした。
【関連記事】
- 【第1•2週レビュー】『虎に翼』寅子の「はて?」に、あの時の自分が救われる。戦う場所は違っても、みんなこの地獄を変える仲間だと伝えてくれる物語
- 朝ドラ『虎に翼』が早くも大傑作の予感!「自分で選んだ地獄なら生きていける」すべての女性の生き方を肯定する脚本がどこまでも美しい
- 『虎に翼』の生理の描写で気づいた、自分の「偏った先入観」。女性の身体の現実を正面から描く作品たちに、しんどい気持ちが軽くなる!
- オススメ「朝ドラ」5選!日本の夜明けは女(ときどき男)のキャリアと人生から始まる。
- 出演者の男女比を50:50に。NHK「あさイチ」制作陣が気づいた「テレビは多様性に配慮するともっとおもしろくなる」という事実