中国で最も有名な日本人の一人・竹内亮。10年間住んでわかった“中国人の圧倒的な働き方”
日本のテレビ業界では「もう先が見えていた」
――ご結婚されてからは、奥さんの故郷でもある南京に移住したんですよね。南京大学にも留学していたとか。 竹内:だいたい2ヶ月ぐらいですね……もちろん、マスターするのは無理ですよ(笑)。1日13時間ぐらい勉強して、現地でとりあえず喋りまくって、HSK(中国語検定)4級までいったんじゃないかな。向こうの家族はもちろん全員中国人ですから、話して慣れるしかなかったですね。 ――そこまでの努力するということは、よほど「中国で新しいキャリアを築く」という意志が強かったんですね。 竹内:「行きたい」と思ったら32歳ぐらいのときだったんですけど、30代前半って、転職する人も多いですし、将来を考える年齢じゃないですか。僕も、もう先が見えてたんですよね。日本のテレビ業界で10年働いて、ある程度規模の大きい番組を担当して、あと何があるんだろうと思ったら、このままずっと同じことやり続けるだけ。「つまんねえな」って。もう1回、新しい環境で全くのゼロから挑戦してみたいと思って、それで移住しようと思ったんです。
日本人が間違えている中国へのイメージ
――奥さんの影響はありますが、そもそも中国関連のドキュメンタリーも撮っていたんですよね。現地で監督をやるにも土台があったと。 竹内:そうですね。NHKで「長江 天地大紀行」も撮っていて、「中国関連の番組と言えば竹内に任せれば大丈夫」ぐらいには思われていました。ただ、僕にとってみればまだまだ全然足りない。あまりにも広大な大地があるのに、住んだことも、話すこともできない。そのギャップを埋めたいっていうのもありました。 ――住んでみて気付いた「ギャップ」はありますか? 竹内:おそらく、「中国に住んで怖い思いしない?」って思う人がいると思うんです。僕が住み始めた2013年なんて、反日デモがガンガン起きた直後のこと。そこから10年暮らしてますけど……日本人だから嫌な思いをしたことは、一回もないです。南京の人も、歴史を学んで、日本が過去に行ったことは良くないと認識している一方で、現代において何か言ってくることもなく。 ――今聞いて、自分でも「へえ、そうなんだ」という気付きがありました。 竹内:「劇場版 再会長江」を作った目的の一つはそこです。10年前と比べて日本に中国人が増えたのに、私たちは彼らの生活を知らず、イメージだけで傷つけているところがあるのを払拭したかったんです。例えば「中国って空気汚いんでしょう?」とか、「独裁国家で何の自由もないんでしょう?」とか、結構言う人がいるみたいなんですよ。独裁国家で自由がなくて、閉じ込められている国だったら、ここまで経済が発展しないですよね。向こうの人は日本が好きで来てくれる人が多いのに、溝があるのはお互いの国にとって良くないんじゃないかと思うんですよね。