古都・奈良を堪能、初の「世界遺産6社寺」夜間特別参拝がスタート
■ 6社寺を時間内に参拝できる? 実際に体験
今年で4回目を迎える古都・奈良の秋の人気イベント『秋夜の奈良旅2023』が11月3日から25日までの間、毎週金・土曜日に開催中だ。例年とは異なり、奈良市の西部「西ノ京」エリアが大いに賑わっている。 【写真】幻想的…期間中は無料で夜間特別拝観できる「東大寺大仏殿」 今年は、「古都奈良の文化財」(東大寺、興福寺、春日大社、春日山原始林、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城宮跡)が世界遺産登録25周年を迎えたメモリアルイヤー。それを記念して、2022年の春日大社、興福寺、元興寺の3社寺に東大寺、唐招提寺、薬師寺が新たに加わり、初の6社寺夜間特別参拝(予約不要)が可能になった。 昨年は約1万2500人もの人が訪れ、今年も開催前から注目を集めており、奈良市観光協会が同イベントにあわせて運行する「奈良若草山トワイライト・夜景観光バス」や春日大社大宮回廊内に約1000基ある釣燈籠への献灯体験はすでに全日満席状態になっている。 夕方5時30分から(東大寺と元興寺は6時)スタートし、受付終了の夜7時45分までの間に6社寺すべて特別参拝が果たして可能なのか? 地元の奈良市民である筆者が実体験してみた。
まずは、本来であれば3月と10月の年に2回しか特別公開されない日本画家・平山郁夫(ひらやまいくお)による『大唐西域壁画(だいとうさいいきへきが)』が今回特別拝観できる西ノ京エリアの薬師寺「玄奘三蔵院伽藍(げんじょうさんぞういんがらん)」へ。 玄奘三蔵は、あの『西遊記』でお馴染みの三蔵法師のこと。なぜ薬師寺に三蔵法師が?と思う方もいるかもしれないが、薬師寺は、日本で一番古い宗派「法相宗(ほっそうしゅう)」の寺院で、法相宗の開祖・慈恩大師(じおんだいし)は、玄奘三蔵法師の弟子。そのため、法相宗の始祖といえる存在なのだ。 『大唐西域壁画』は、玄奘三蔵の唐からインドへのシルクロードの旅路を平山画伯が30年に及ぶ取材旅行を敢行し、4千枚を超えるスケッチを基に約20年かけて描いたという7場面・13壁面、全長49mの大迫力の超大作。親交が深かった同寺の高田好胤(たかだこういん)元管長との約束を守り、ミレニアムを迎える平成12年(2000)12月31日に奉納された。 薬師寺の安田奘基(やすだじょうき)師は、「玄奘三蔵様は夜に砂漠を旅したので、それにちなんでの夜間特別参拝です。高田元管長の手による『不東』には、三蔵様がインドに着くまでは一歩も東に帰るまいとした思いが込められているので、追体験していただければ」と語る。 5時半の開始時間から、途切れることなく、続々と多くの参拝客が訪れており、今回の夜間特別参拝のなかでも特に注目を集めているようだ。