センバツ広陵・支える人/中 トレーナー・山西裕恵さん 選手ケアする“母親” /広島
<第91回選抜高校野球> 2月中旬、グラウンドを望む一室で、約20年にわたり広陵のトレーナーを務めている山西裕恵さんは、腕の不調を訴えるエースの河野佳投手(2年)を診ていた。ベンチにタオルを敷き、河野投手を寝かせると「痛いけど少しだけこらえて」と、アルミでできた銀色のへらで右肘をさすった。筋肉をほぐす施術で、河野投手は「腕を回しやすくなった」と笑顔を見せた。 佐伯区の整形外科医院に勤務する傍ら、週に1度、広陵を訪れて選手の体のケアやリハビリの指導を行う。休日を返上しボランティアで施術を行うことも。寮生活を送る選手たちにとって母親のような存在で「リラックスして、何でも話せる人」と慕われている。 知人を介してトレーナーを打診されたが、当初は「サッカーが専門だったので断っていた」と明かす。それでも、一度、広陵の練習を見に行くと、泥まみれになりながらも生き生きとした表情で練習に励む球児の姿に心を打たれた。「真面目に頑張っている人を応援しないわけにはいかない」と依頼を受けた。 「野球は投手だけでなく野手も投球を繰り返すため、筋肉が固まりやすい」と語る。そのまま放置していると肩や肘の可動域が狭まり、疲労骨折などにつながるという。そのため選手と接する際は、筋肉の状態に細心の注意を払ってけがの防止に努めている。 「少しでも良い治療を受けさせたい」と月1回は東京や大阪までトレーナーの勉強会に参加する。OBからの信頼も厚く、プロ野球・広島東洋カープの野村祐輔投手(29)は、オフシーズンになると、山西さんの元を訪れ体のケアを依頼するという。 選手の活躍はもちろんだが、人間的に成長していく姿を見るのがたまらなく楽しい。「あいさつの声が大きくなったり、心を開いてくれたり。少しずつでも成長している姿を見られるのがやりがい」と声を弾ませる。 甲子園でも、選手のケアに努めるつもりだ。「久しぶりのセンバツ。『桜の広陵』をみせてほしい」と、4度目の頂点に期待を寄せている。【隈元悠太】