ステイサムを違和感なく演じられる理由

山路和弘（写真：藤村全輝）

──声優として動かれる現場においては、コロナ以降は別録りも増えていったんですね。 そうですね。だんだん戻りつつあるんですけど。 ──別録りの良さもあったりするんでしょうか。 相手を想像しながらやるとどうしても一本調子に近くなるんです。人の声を聞きながらやっていると波が自然にできてくるじゃないですか。それが足りないところがあるかな。みんなとやっているように波を作るのは、コロナでちょっと鍛えられはしましたけどね。 ──3作目なんて主演級の声優の皆さんが一堂に会したお祭り映画だったじゃないですか。乱戦シーンも皆さんで録られたんですか？ そうですね。シーンによって何人かに分けていたかもしれないんですけど、全員で集まると気持ちいいものでしたよ。先輩ばっかりだから腰が低くなる現場ではあったんだけど（笑）。 ──そういう時もスタローン役のささきさんが音頭をとっていくんですか？ あの方はボンっとしているから。太いというか懐が深いというか。存在を感じているみたいなところはありますね。 ──特典映像として収録してほしいくらいです（笑）。山路さんはヒュー・ジャックマンの吹替もされていますが、その時はどういった感覚ですか？ 喋り方がちょっと違うんです。あんまり心掛けていることはないんですけどね。自分で話している声と聞こえてくる声を照らし合わせると気持ちが悪い時があるんですけど、ヒュー・ジャックマンの時はあんまりないんです。ステイサムの時ももちろん違和感なくて、自分が息するのと同じように息してくれるんで、本当に普通にできるなと思います。 ──演者としてのステイサムと山路さんご自身にリンクする部分はありますか？ 男くさい世界にいる映画をすごく撮ってるじゃないですか。自分は男くさいところからかけ離れてるんで、そういった役柄はどうしようかなって思うんですけど……、ステイサムは見た目も筋骨隆々という感じではないし、男くささだけじゃない魅力があるのでこの人に関しては違和感なく演じられています。 ──たしかに、他のアクション俳優に比べてステイサムはウジウジしていていい人というか。 そういうシーンがあっても平気なところありますよね。そこがアクションスターとして売れている理由なのかな？ 身近に感じるのかな。『トランスポーター』の時は無口のガチっとした男じゃないですか。でもあれはあれで魅力全開だったしな。なんなんだろうね……？（笑）人間の魅力なんですかね。 ──声優としての多数お仕事をされる中で、舞台や映画・ドラマの発声は活きてくるものですか？ いや僕、発声悪いんですよ（笑）。すぐ喉やっちゃったりしてね。でもいろんな役をやるとそれを使わないと仕方ない時があって。この稼業をやるようになって、いろんな出し方を覚えたのかもしれないですね。 ──4作品の中で、そういう意味で思い入れ深いシーンはあったりしますか？ 1作目で出てくるバスケットコートのシーンの、何とも言えないスカッと感が好きでしたね（笑）。 ──DV男率いるバスケチームを一網打尽にするシーンですね。 気持ちいいまでにやってくれちゃう。バカスカやる時に引いちゃったりするけど、あの人がやるとそういう感覚ないですよね。あんなに嫌な感じがしないのはなんだろう？（笑） ──そうですよね。逆に本シリーズでガンナー・ヤンセンを演じるドルフ・ラングレンは『ロッキー』の悪役っていうイメージだったので、嫌味ったらしい演技もより嫌味ったらしく見えます。それもそれで味なんですけどね。 そうですよね。ステイサムはそれがないんですよね。 ──ご自身ではステイサムの『アドレナリン』が好きとおっしゃっていましたが、他にも映画として好きなステイサムの作品はありますか？ 『ハミングバード』とか、ギャンブラーの『ワイルドカード』と娘を守る『バトルフロント』も好きでしたね。アクション一辺倒じゃない映画ってあるじゃないですか。それとは逆の『トランスポーター』のような、ずっとステイサムが無口なハードボイルド・アクション的な映画も好きなんですけどね。 ──個人的には『デッドプール3』でまたウルヴァリンが帰ってくるので、山路さんのヒュー・ジャックマンの声を聞けるのを楽しみにしています。 そうなの？ 楽しみです。喜んでって感じですね。 ──今回はスタローンからステイサムへの“継承”がテーマだったかと思いますが、今後『エクスペンタブルズ』シリーズが続くのであればどうなっていきそうですかね？ ステイサムが（スタローン演じる）バーニーの位置に行くとつまらなくなると思うんだよね。だからきっと、新たな上の人間に反骨する位置にいて、それがひねられていくのかなと思います。バーニーみたいにはならないけど、心情的にはステイサム中心にやっていくんじゃないかなと。スタローンにとって一番信頼できる役者なんだと思います。 ──コーラが似合う映画ですよね。今後も続くといいなと思っています。 本当にポップコーンとコーラが似合う映画ですよね。続くといいなって指折り数えている私がいます。