セレブのファッションで振り返る、90年代のアイコニックなメンズルック
ブラッド・ピットの着古したレザージャケットから、デンゼル・ワシントンのリーバイスまで。 【写真20枚】ブラッド・ピット、キアヌ・リーヴス、マイケル・ジョーダン……。90年代セレブファッションをチェック! 90年代スタイルが帰ってきた。好むと好まざるとにかかわらず、チャンキーなカーディガンにレザージャケット、プラットフォームブーツが復活を果たしたのである。 ファッションの歴史において、最も多様性に富んだ時代と言えるかもしれない90年代の美意識を端的に言い表すのは困難だ。マルチカラーでありながらミニマル。ポップでありながらパンク。タイトでありながらオーバーサイズ……。映画から音楽、スポーツ、ビデオゲームまで、あらゆるポップカルチャーの影響下にあったのが90年代スタイルだ。そんな時代の産物を再び目にすることがあるなど、誰も考えなかっただろう。しかし近年、バーバリーやグッチ、トム・フォード、ヴァレンティノなどが、パリやミラノのランウェイでこの時代のスタイルを復活させているのである。 90年代スタイルの何がこの復活劇の背景にあるのか。答えは簡単だ。アーカイブを一目見ればわかることだが、この時代のスタイルの魅力はそのノンシャランな雰囲気にある。以下、90年代を彩ったメンズスタイルの数々を、当時のアイコニックなスターの写真とともに振り返ろう。 ■ブラッド・ピット(1991年) 1991年のブラッド・ピットは、TikTokの男性たちが今でも憧れる髪型をしていた。彼はそれにメタル製の眼鏡を合わせ、着古したレザージャケット(おそらくヴィンテージ物だろう)を複数枚重ねたTシャツの上に羽織っていた。よく見ると、アシッドウォッシュのTシャツが下から覗いているのがわかるはず。これぞ、まさに90年代といったところだ。 ■ダニエル・デイ=ルイス(1990年) ダニエル・デイ=ルイスがメンズスタイルの王様であることは、遙か昔から変わらない。彼は俳優を引退した現在も、ニューヨークの街をカーハートの上下でカジュアルに闊歩しているところがキャッチされている。30年前のデイ=ルイスは、ふさふさとした長髪がトレードマークだった。この髪型をうまく真似るのはハードルが高いが、彼が1990年に着ていたようなダブルブレストのウールコートには投資しておきたいところだ。 ■デヴィッド・ボウイ(1990年) 90年代スタイルを語るのに、デヴィッド・ボウイの名前は外せない。彼の特技は重ね着だ。スーツでピシッと決めたなら、ボウイのように大きめのコートも羽織ってみてはどうだろう? 加えて、小物で差を付けるのも忘れないように。彼の真っ赤なカシミアスカーフは大いに参考になるだろう。 ■デヴィッド・シュワイマー(1996年) レザージャケットはよく目にするが、多くの男性が暗い色の控えめなアイテムを着ているのが実情だ。1996年に目を向けてみよう。デヴィッド・シュワイマーは鮮やかなブルーの一着で、ひと味違った着こなし術を披露した。クラシックなオーバーサイズフィットで、コントラストの効いたブラックのボタンがアクセントを添えている。 ■デンゼル・ワシントン(1993年) 90年代スタイルのムードボードでは、常連となっているに違いないデンゼル・ワシントン。ロサンゼルス国際空港で撮影されたこの写真で、彼はニューヨーク・ヤンキースのキャップを被り、白Tシャツにリーバイスのブルージーンズを合わせていた。回り回って、今のクールなキッズがこぞってしている服装そのものだ。 ■ジョージ・クルーニー(1995年) レッドカーペットは現在、一流ブランドによるスーツやブーツの着こなしを披露する場となっている。しかし、1995年はどうだったろう。ジョージ・クルーニーは、レストラン「プラネット・ハリウッド」のTシャツにジャケットと黒ジーンズというラフな出で立ちで違いを見せつけた。 ■ジャレッド・レト(1999年) 2021年の『ハウス・オブ・グッチ』にジャレッド・レトが出演したのも運命だったのかもしれない。1997年、彼はシャツとセーターのコンビネーションに、オレンジのパイロットサングラスを着用していた。それら全てがグッチだったのである。今で言うノームコアのスタイルだが、30年近くが経過した現在もエメ レオン ドレやKith(キス)のルックブックに登場してもおかしくないエバーグリーンなアンサンブルだ。 ■ジェフ・ゴールドブラム(1992年) 色とりどりのプラダのシャツを熱心に着るようになる前、ジェフ・ゴールドブラムはどちらかと言えばダークな服装がお気に入りだった。ここでの彼は黒シャツのボタンを3つほど開け(『ジュラシック・パーク』で、彼が胸をはだけて横たわっているアイコニックなシーンが思い出される)、その上にボクシーなレザージャケットを羽織っている。これは当時と同じくらい、今でも十分に通用するルックだ。セリーヌの店舗を訪れればそれがわかるだろう。 ■キアヌ・リーヴス(1994年) 『マトリックス』でレザーのトレンチコートをクールに着こなしたキアヌ・リーヴス。しかしネオを演じる遙か前から、彼はオールブラックのテーラリングを見事に決めていた。かっちりフォーマルに固めるのではなく、リーヴスはジャケットとパンツのセットアップを同じ黒のTシャツに合わせ、スマートカジュアルのお手本を示してみせた。 ■カート・コバーン(1993年) 90年代初頭から中頃にかけて、グランジ・シーンが一大ムーブメントとなった。あなたがグランジロックのファンではなかったとしても、ワードローブにはニルヴァーナのカート・コバーンが着ていたようなストライプのロングTシャツがあるに違いない。ジーンズと合わせて、チェーンでもぶら下げれば、完璧なグランジスタイルの完成だ。 ■レオナルド・ディカプリオ(1993年) 黒と青の組み合わせは御法度だと言う古い考えを振りかざす人は、1993年のレオナルド・ディカプリオを見たことがないはずだ。全体のルックを見るとやや危ういが、一つ一つのアイテムはかなりいい。赤いステッチが施されたスエードのシャツなんて最高じゃないか。 ■マット・ルブランク(1995年) 第21回ピープルズ・チョイス・アワードの授賞式でマット・ルブランクが召していたのはタキシード。それだけならクラシックかつ王道なチョイスと言えそうだが、そこは90年代。レザーベストとチェーンなど、クロムハーツのアイテムで水も滴るルックに仕上がっている。 ■マシュー・ペリー(1996年) 先に挙げた『フレンズ』の共演者たちと並んで、マシュー・ペリーもビッグなスタイルを披露してきた。白Tシャツにゆとりのあるジャケット、そしてオーバーサイズのパンツ。紛うことなき90年代スタイルだが、最近ではクワイエット・ラグジュアリーという新たな名称もある。このルックなら、あらゆる場所で最もクールな人物の一人になれるだろう。 ■マイケル・ジョーダン(1995年) マイケル・ジョーダンを抜きにして、90年代スタイルは語れない。彼は史上最高のバスケットボール選手であるだけでなく、数十億ドル規模にまで成長したジョーダン ブランドの立役者でもある。オークリーのキャップ、賑やかなカラーブロックのトラックスーツ、大げさなスニーカーは、当時の彼の日常的なユニフォームだった。 ■ニコラス・ケイジ(1993年) ニコラス・ケイジにできないことなどあるだろうか? 彼がアカデミー賞も受賞した素晴らしい役者であることは周知の事実だが、実は“空港ファッション”の王様でもある。ジャケット、ブーツ、バッグは全てレザーで、使い古したトラッカーキャップがアクセントを利かせている。ハリウッドの一流俳優たちが今日に至るまで披露する、クラシックなアウトフィットだ。 ■ポール・ラッド(1999年) ポール・ラッドから学ぶことは多い。1999年、彼はネイビーのシャツとコーデュロイパンツの上に丈の長いツイルコートを羽織り、アウターウェアの着こなしを完全にマスターしていた。これらは、我々の誰もがワードローブに備えておくべきアイテムだ。彼の惚れ惚れする肌つやの謎はまだ解明されていないが、服装だけでも近づきたいところだ。 ■ピアース・ブロスナン(1990年) ピアース・ブロスナンのようなセックスアピールを身に付けることはできなくても、少なくとも彼のような服装は我々にだってできるはずだ。ジェームズ・ボンドとしてタキシードを纏うようになる前、ブロスナンはタンカラーのシングルブレストジャケットと清潔感のある白ジーンズで、よりリラックスした路線が板に付いていた。地中海のリゾートにぴったりなカジュアルルックだ。 ■ロバート・ダウニー・Jr.(1999年) ここ最近のロバート・ダウニー・Jr.はいいスーツを好み、授賞式やプレスツアーに出席するたびに完璧にテーラリングを着こなしてきた。しかし、25年前は様子が違う。彼はレザージャケットを羽織り、サングラスと野球帽で決めていた。一つだけ変わらないのは、あの相変わらずのいたずらっぽい笑顔だ。 ■トム・クルーズ(1992年) 正直なところ、この記事を書き始めた当初はブドウ色のブレザーなんて考えられもしなかった。しかし、トム・クルーズの90年代スタイルを見てほしい。我々の考えがすぐに改まったのは言うまでもないことだ。彼のボクシーなシングルブレストのジャケットは、定番アイテムであるブルージーンズを見事に引き立てている。そして、彼の髪型を特徴付けるアイコニックなセンターパートは、今でもTikTokインフルエンサーたちの憧れの的だ。 ■ウィル・スミス(1994年) 真っ赤なジャケットにチェーンの小物なんて誰にも似合わない思ったら、それは間違いだ。少なくとも、ウィル・スミスには当てはまらない。このアウトフィットは上級者向けで、相当な自信家にしか着こなせないだろう。もしあなたに自信がたっぷり漲っているなら朗報だ。そうでないなら、やめておくのが賢明だろう。ついでに言っておくが、ベルトにも気を抜かないように。 From British GQ by Adam Cheung Translated and Adapted by Yuzuru Todayama