<主権回復の日>政府の式典、なぜ問題に?
政府は4月28日、「主権回復の日」の式典を東京都内で開きます。安倍晋三首相の肝いりで決まった式典ですが、反対する声もあります。いったい何が問題になっているのでしょうか。 「主権」とは、自国の意思で国民や領土を統治する国家の権利、つまり「国家主権」のことです。日本は1945年(昭和20年)、第二次世界大戦の敗戦によって連合国軍総司令部(GHQ)の占領下に置かれ、「主権」をアメリカに奪われました。そして1952年4月28日に発効したサンフランシスコ講和条約により、主権を回復します。それから61年後の今年、初めて記念式典が開かれることになりました。 国家主権の回復を記念する式典なのですから、日本にとって一見良いことのように思えますが、この式典に反発する動きも起きています。 1つは、沖縄県民の反発です。実は沖縄では、4月28日は「屈辱の日」と呼ばれているのです。沖縄は講和条約発効後も奄美、小笠原とともに米軍の統治下に置かれました。米軍が沖縄に駐留し、土地は接収され、基地は拡大、その強引な手法は「銃剣とブルドーザー」と呼ばれるほどでした。そして敗戦から27年を経た1972年、沖縄はようやく日本に返還されました。しかしその後も沖縄には在日米軍専用施設の7割以上が集中し、米兵による犯罪なども多発しています。沖縄県民からすれば、主権は「回復」どころか脅かされたままなのです。 こうした情勢を踏まえ、仲井真弘多(なかいま・ひろかず)沖縄県知事は式典に出席せず、副知事を代理出席させることにしました。 問題の2つめは、政府が天皇皇后両陛下の式典出席を予定していることです。野党からは「陛下をお招きすることは、陛下の政治利用の側面がある」として、憲法違反を指摘する声も上がっています。 こうした反対論に対し、安倍首相は式典の意図を「日本の独立を認識する節目の日だ」と強調しています。首相が式典開催を決断した背景には、尖閣諸島や竹島、北方領土などの領有権について周辺各国・地域との対立が生じる中、領土や主権の問題では譲歩しないという日本政府の姿勢を国内外にアピールする狙いもあるとみられています。