映画『九十歳。何がめでたい』前田哲監督「軽薄に見えようが、ウエットにしたくないという自分の信条が、愛子先生の考え方とフィットした」
佐藤愛子さんのエッセイを原作とした映画『九十歳。何がめでたい』が現在公開中だ。物語は、断筆宣言をした90歳の老作家・佐藤愛子(草笛光子)が女性誌『ライフセブン』の編集者・吉川真也(唐沢寿明)に連載を依頼されるところから始まる。何度断っても諦めない吉川に、破れかぶれの気持ちで再び筆を執り、90歳を過ぎて感じた時代とのズレや違和感、身体の衰えをユーモラスに綴ると、刊行した単行本『九十歳。何がめでたい』がまさかのベストセラーになって──という国民的エッセイ誕生までの物語。 【写真】主演の草笛光子と漫才のようなやり取りをしていた前田監督。微笑ましい撮影のオフショット。
2021年公開の映画『老後の資金がありません!』で草笛さんとタッグを組んだ前田哲監督は、2023年の正月、草笛さんの家に招かれたときに「佐藤愛子さんの『九十歳。何がめでたい』を原作に映画にしたいのよ」と相談されたという。 「すぐに本を読んでみたんですが、すべてのエピソードが面白かった。みんながなかなか言えないことをズバっと鋭くついて、ユーモアに包んで書いている。何より生きてきた蓄積に裏打ちされているから強く響く。愛子先生の竹を割ったような潔い生き方ですよね。そこには草笛さんとの共通点も感じました。 僕は、人生は残酷だからこそ映画で希望を描きたいと思ってきました。人から軽薄に見えようが、ウエットにしたくないという自分の信条が、愛子先生の考え方とフィットしたというか、何としても映画にしたいと思いました」 監督自身、愛子先生とは2回会い、一度は膝をつき合わせて脚本について話をしている。 「やっぱり原作を読んだ人を裏切っちゃいけないと思うんです。全然形は違いますが、愛子先生の潔さや原作にあった愉快痛快な面白さ、読み終わった後、元気がわいてくる多幸感……僕がこだわったのはエンドロールです。 愛子先生がいろんなものを背負ったり手放したり、苦労を苦労と思わず生きてきて、今100歳でいらっしゃること。人生にはいろいろありますが、何があっても生きていくしかないわけで、それをめでたいというか、草笛さんが演じ、愛子先生の写真を映した時に、誰の腹の底に落ちると思うんです。それはやっぱりふたりの凄さだと思います」 ※女性セブン2024年7月4日号
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