「国立競技場」報道公開 スタンド目線とグラウンド目線で感じたこと
●客席は雨には濡れない?
約6万人を収容するスタンド部分(うち車いす席は500席)は、基本的に高さ約47メートル、長さ60メートルの大屋根に覆われており、「風がなければ」全ての席が雨に濡れない設計だ。大屋根の南側は部分的にガラス張りになっていて、芝生の養生のための採光部になる。 この日は報道向けの公開で観客席に客はいなかったが、客席を遠目に見ると人で埋まっているようにも見えた。それは、座席を5つの色でランダムに配色しているためだ。「森の木漏れ日」をモチーフに、スタンドの下部から上部へ、茶色系、木々の緑、そして空に向かって白色へとグラデーションしていく。 西側がメインスタンドで、北側に時計や45分計のついた縦約9メートル、横約36メートルの大型ビジョンが設置(南側ビジョンは縦約9メートル×横約32メートル)されている。 スポーツ観戦時にはトイレ休憩でどれくらいの時間をロスするかも重要だ。数万人規模の観客でごった返すスタジアム内は、ハーフタイム時などにトイレを待つ長い行列ができるのが恒例だ。男子便所は1027基(うち大便用266基)、女子便所は933基あり、2002年ワールドカップ日韓大会の決勝が行われた横浜国際競技場(最大7万2000人収容)のそれぞれ倍以上が確保されている。
●競技によって照明が違う?
日が暮れて競技場に照明が灯る頃、フィールド部分に降りることができた。 照明器具は計1500台ですべてLED照明。陸上、サッカー、ラグビーなど競技によって照明の当て方を変える。この日はピッチを中心に照らすサッカー仕様だった。 天然芝生は、地中温度制御システムやピッチ脇と内部の散水システム、大型の送風機などによって管理される。あいにくこの日はピッチに近づけなかったが、芝生の長さは25ミリと、通常の陸上競技場やJリーグのスタジアムと同程度の長さに刈りそろえられているという。 グラウンドからは、スタンドの傾斜や高さによる威圧感を感じるのではとも思ったが、実際に降り立ってみるとそう感じることはなく、むしろスタンドからの応援に包まれるアスリートの高揚感を味わえた。設計コンセプトでは「観客とアスリートの一体感」が打ち出されており、合成ゴム製の陸上トラックの上では走り出したくなった。 1層目の座席にも座ってみた。トラックが目の前にあるので、陸上競技は迫力ある観戦ができそうだ。座席にはカップホルダーが完備されていて、平均的な日本人男性が座っても足の前には余裕がありそうだ。ただ1列に20席以上配列されているので、真ん中くらいの席に座った場合は、トイレなどで通路に出るまでに少し苦労しそうな心配はある。いずれにせよ、早くこの競技場でアスリートや選手たちが躍動する姿を見たくなった。 五輪後には、国立競技場は球技専用のスタジアムに改修される方針だった。しかし、一転して陸上トラックを残す方針であることが伝えられている。東京大会の象徴が五輪後にどんな「レガシー」になっていくのかも注視したい。