力強く生まれ変わった鉄風東京が、仲間と共に作り上げた祭りのような一日 『FLYING SON FES 2024』オフィシャルライブレポート
イベントも終盤に近づき、鉄風東京とは同じ02世代のバンドとしてツアーやツーマンライブなど共演の多いルサンチマンの出番がやってきた。 メンバーそれぞれの今時の若者感溢れるフレッシュさからは想像できないような生々しい感情を覗かせるオルタナティブなロックや、マスロックの影響も感じさせる緻密なフレーズが垣間見える彼らの音楽。若手ロックシーンの間でもここ数年急速に存在感を強めている。 「荻窪」でライブがスタートするとオーディエンスの拳がみるみるうちに挙がり、曲中にオフボーカルになってもフロアからは一緒になって歌っている声があちこちから聞こえてきた。やはり彼らを待っていてバッチリ支持している層がいるようで頼もしい。 「俗生活の行方」でヒリヒリしたサウンドと歌詞を浴び、彼らの特徴的な持ち味のひとつでもあるインスト中心の「not wrong」が加速していく頃にはじわじわと静かに会場内の熱気が高まっていった。一見クールなように見えるが、その芯の部分はどんどんと熱が高まって伝染していくルサンチマンのライブは、実は赤い炎よりも高音である青い炎と似ている。 バンド全体の演奏力の高さはもちろん、結った長髪を靡かせながらアグレッシヴに中野(g)が弾き倒すギターフレーズをしっかりと聴かせるような長めの尺の楽曲も多く、いくつも自分たちの軸があるようなバンドの強度がいかんなく発揮されていた。 フラサンフェスへの2年連続出演への感謝をMCで述べる北(vo/g)。元々あまり(意見を)話すタイプではないことを自ら伝えながらも、「今日の出演者もそれぞれいろんなスタンスのバンドがいるけど、"どのスタンスも全部いいな"。そうお互い思えたら一番いいなと思います。そう言葉を漏らすと、リリースを控えた音源「Our Tour, Your Home」の中から新曲「アワーツアー」を披露。泣けるメロディーの中にも独特のコード進行と展開を感じる彼らの得意な唯一無二なアレンジ。自分たちのスタイルや思いは、曲に込めて伝えるという意思を改めて強く感じた。 勢いそのまま「ikki」をかっ飛ばし、10代の不安定な気持ちを総まとめにしたルサンチマンなりの決意表明とも言える「十九」で衝動をさらに大爆発させ、ステージを後にした。 ここまでアコースティックステージでは"駅裏アーティストのみなさん"と大黒が呼ぶ、駅裏に位置するFLYING SONで共に活動し共に遊んできたイツメンのバンドマンたちが熱演を重ねていた。オクダ(ベス)、ケイタ爆発とケイウメザワ(勃発/izumi)のライブ中には大黒も野次を飛ばしたり口ギターで参加する場面もあり、注目を集める10代の後輩バンドhalogenの才能溢れるアクトには熱い眼差しが届けられていた。 このステージの最後を飾るのは鉄風にとって同志とも呼べるであろうEverBrighteller。 ホール内に注意を向けると、セッティング中の大黒が「みんな屈伸とか念入りにしておいてね?(長丁場だから)足疲れてるでしょ?あとさ、もしまだ元気あるぞーってヤツがいたら、おれらの代わりに(アコースティックステージでライブをしている)エバブラのこと茶化してきてよ。」と観客を和ませていたところだった。 今日だって会場は大きいけどいつもと変わらないよ、と演者とお客さんの垣根を取っ払ったようなフラサンの光景を最後まで大事にしていたようだった。 ロビーに戻るとEverBrightellerが最後に鉄風東京の「スプリング」を歌うという粋な演出が。歌い終わりに一言「次は鉄風東京」とメインステージを指差し、本日の主役へとバトンタッチ。