2024年度税制改正議論が始まる:所得減税と防衛増税が交錯
税制改正議論では所得減税の減税期間と所得制限の有無が争点
自民、公明両党は11月17日に、2024年度の税制改正を議論する税制調査会の総会をそれぞれ開き、税制改正議論を本格的に開始した。12月中旬頃に与党税制改正大綱がまとめられる見通しだ。 最大の注目点は、政府が閣議決定した定額の所得減税の具体策である。所得税と住民税の合計で4万円の減税を、来年6月から実施することは決まっているが、決まっていないのは減税期間と所得制限の有無の2点だ。 減税期間を巡って自公間では隔たりがある。自民税調の宮沢氏は「1年の減税にならざるを得ない」としている。一方、公明税調の西田実仁会長は「1年限りと決め打ちすべきではない」とし、経済状況次第で複数年の減税措置とする考えを示している。 他方、減税の所得制限に関しては、自民税調内では富裕層を対象から外すべきだとの意見が多い。他方、公明税調では所得制限に否定的な声も根強い。 最終的には、1年間の時限的な減税と年収1000万円~2000万円などの所得制限がなされる可能性を見ておきたい。
所得減税の費用対効果は小さく問題
1年間の4万円の定額所得減税で年収1000万円の所得制限、さらに扶養家族への4万円の給付金で総額は約3.6兆円、実質GDPの押し上げ効果は1年間で+0.12%に過ぎない計算だ(コラム「大枠が固まる総合経済対策。GDP押し上げ効果は減税・給付金で+0.19%、対策全体で+1.2%と試算:減税・給付金に大義はあるか」、2023年11月2日)。 減税・給付金の規模の割に経済効果は小さく、費用対効果の小さい経済政策だ。時限的な減税や一時金は貯蓄に回る割合が高いことがその理由の一つである。 政府は、景気浮揚のための措置ではなく、物価高で実質所得が減る中で可処分所得を増やす物価高対策と説明している。しかし、個人は物価高に賃金上昇が追い付かず、実質賃金の減少が長く続くことを警戒している。個人の景況観や消費行動は、こうした長期の展望に基づくところが大きく、この点から、一時的な減税や給付金は物価高対策となりにくい。他方、減税期間を伸ばせば、費用も増えるため、費用対効果はさらに低下してしまうだろう。 物価高によって生活が圧迫されていない所得層に対しても減税を実施するのは、効果の低い政策であり、減税を実施するならば所得制限は必要だろう。本来は、物価高に苦しむ低所得層のみを支援するセーフティネット策とするべきところだ。