年俸は選手に対する球団の評価でもあるから、自分が納得するまで話し合うことが必要だ。人と比べるから感情的になり、欲が出るのだ【張本勲の喝!!】
オーナーへの直談判
1976年の長嶋巨人初優勝。オフの契約更改は筆者[右]を非常に驚かせた
各球団ともに契約更改が行われている時期だ。今季活躍した選手は期待に胸を膨らませ、逆に結果を残せなかった選手は心中穏やかではないだろう。プロはお金がすべて。金額がその評価となる。私も現役時代、活躍すれば少しでも上げてもらおうと思っていたし、不本意な結果だったときは何とか現状維持、下げられるにしても最低限に抑えようとしたものだ。どちらにしろ、来季の年俸が上がるか下がるかは選手自身が一番よく分かっているはずだ。 だから選手はある程度、自分の予想額をあらかじめ頭に入れ、そこに幅を持たせて球団との交渉に臨む。例えば3000万円あたりと考えたなら、2800~3200万円まで幅を持たせる。それ以上の提示なら喜んでサインするが、問題は下回ったときだ。選手は思いもしなかった額だからカッとなる。冷静ではいられなくなり、その後の球団の説明など頭に入らないだろう。大切なのはここからの話し合いだが、少し時間を置いたほうがいい場合もある。 そもそも球団には選手の年俸予算という枠があり、1円でも抑えたい。一方、選手は1円でも多くもらいたいから、揉めるのは当然とも言える。だから話し合いでその溝を埋めるわけだ。ただし選手は感情的になったら負け。そうなるとこれまでの不満など、余計なことまでつい口に出てしまうから、球団への印象も悪くなる。契約更改で大事なのは感情的にならないこと、余計なことは言わないことなのだ。 昔話になるが、私は東映時代の契約更改で球団代表と話し合いがなかなかまとまらず、平行線が続いたことがあった。私は当時、駒澤に住んでいたが、近くに大川博オーナーの邸宅があった。そこである日、意を決して邸宅まで足を運び、大川オーナーに直談判したことがあった。 「オーナー、今回の提示額ではどうしても納得がいきません」 「分かった、分かった、球団には言っておくから」 大川オーナーからそう言われ・・・
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週刊ベースボール