FRBの1年間の高金利政策が米経済に及ぼした影響-グラフで検証
(ブルームバーグ): 米金融当局が政策金利を20年余りぶりの高い水準に引き上げてから1年がたち、過熱した米国経済を若干抑制することに成功した。ただ、利上げは幾つかの予想外の影響ももたらしている。
高所得世帯は株式市場の活況や住宅価値の上昇による恩恵を享受している。企業は急ピッチで借り入れし、消費者は支出を続けている。
しかし、その一方で、1年間に及ぶ高金利はついに打撃を及ぼし始めている。米国人の求職期間は長期化し、失業率は上昇している。中小企業は高金利の融資から痛手を受けている。比較的低所得の世帯では、自動車ローンやクレジットカードの延滞が増えている。
シティグループのエコノミスト、ベロニカ・クラーク氏は「ここ2、3カ月に状況は軟調に推移しているが、さらに急速に軟調になり始めたら、米金融当局はかなり懸念するだろう」と指摘した。
米金融当局は30、31両日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置くというのが大方の予想だが、投資家は9月の利下げ開始を予測している。それまでは、米金融政策が経済にどのような影響を及ぼしているのか、あるいは及ぼしていないのかを見極めることが、労働市場に打撃を与えずにインフレ抑制を目指す当局者の指針になるだろう。
住宅市場
利上げは米国の住宅市場に最も明確な影響を及ぼしており、米金融当局の政策は借り入れコストの上昇だけでなく、住宅価格の高騰にも拍車をかけた。家計の住宅購買能力を示す住宅取得可能指数は、過去30年余りのデータで最低水準に近い。
全米不動産業者協会(NAR)によると、住宅ローン金利が7%前後で推移する中、中央値の住宅を購入する人の住宅ローン支払額は5月に2291ドル(約35万2000円)と、3年前の1205ドルから上昇した。
株式ブーム
金利上昇は通常、企業投資や成長を減速させることで、株価の重しとなる。しかし、投資家はこうした懸念をほとんどものともせず、その結果、株価は新たな水準に上昇するとともに、米国人の退職金口座の残高も増加した。