ミシュラン1つ星の北村啓太シェフが日本の風土をフレンチで表現する〈アポテオーズ〉!
虎ノ門ヒルズ ステーションタワーが2023年10月6日にオープンして世間を賑わせた。これよりも少し遅れて、最上階49階に11月21日オープンしたのが〈アポテオーズ(apothéose)〉。フランスでミシュランガイド1つ星を獲得した北村啓太さんがシェフを務めていることから、脚光を浴びている。
北村さんは〈ラ・ナプール〉と〈レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ〉で合わせて8年間、成澤由浩さんのもとで研鑽を積んでから渡仏。〈シェ レザンジュ〉や〈ピエール・ガニェール〉などの名店を経て、2017年6月から約6年間〈ERH〉でシェフを務め、星を獲得したという本格派の料理人。 〈アポテオーズ〉で提供されているのは、おまかせコースの“アポジェ(Menu apogée)”(2万5000円)のみ。12品構成になっていて、様々な食味と食感を体験しながらも、軽やかな食後感になっている。北村さんが紡ぐ料理の中でも食べ逃せないのが“米”だ。
ビーツのラビオリに、静岡県にある堀江養鶏で育てられた、最高の肉質と称される“天城軍鶏”の雄の腿挽肉を包み込んだ。仕上げに、食味に優れた大粒の米“いのちの壱”のブイヨンをかけてもらえる。ラビオリにほんのりと差した甘味と研ぎ澄まされた米のブイヨンの澄んだ甘味が調和し、“天城軍鶏”の旨味がギュッとあふれ出す。北海道産“北の華ニラオイル”の清涼感ある佳香が、これまた素晴らしい。上にあしらわれたオータムポエム=アスパラ菜と七草のひとつ“ハコベ”が可憐な色彩を加える。米が主役のようでいて、まわりを引き立てる脇役も担い、新たな米のポテンシャルが引き出された逸品。日本酒とのペアリングは最高だが、軽めの赤ワインと合わせるのもいい。 コースは少量多皿のデギュスタシオンで、他にも魅惑の味覚が体験できる。
“蝦夷アワビのカルパッチョ”は、磯の香りがふんだんに感じられる前菜。蝦夷アワビは昆布の旨味をまとっており、豊かな海の風味に満たされている。刺身の状態で提供されるので、蝦夷アワビの繊細な滋味を捉えられるのだ。爽やかなトマト、 香味野菜のセロリやネギオイルが合わせられており、味わいが単調にならない。