王位戦へ初挑戦の渡辺明九段!それを迎え撃つ藤井聡太王位との第65期王位戦七番勝負の展望はいかに!?
藤井聡太王位に渡辺明九段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負。タイトル戦での顔合わせは昨年の名人戦七番勝負以来だ。 【写真を見る】永世称号がかかる藤井聡太王位 藤井は初タイトルである棋聖の直後に王位を奪取。今期は5連覇が掛かり、防衛すれば史上4人目(大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、羽生善治九段)の永世王位の資格者となる。 八冠すべてを保持しており、今年度に入って内容的に苦しむところもあったが、5月下旬あたりから調子をあげてきた。王位戦は棋聖戦と合わせてのダブル防衛戦となる。 各種タイトルを獲得してきた渡辺だが、唯一縁のなかったのが王位戦だ。歴史の新しい叡王戦を除けば、それ以外の6つのタイトルは獲得してきた。だが、王位戦に関しては獲得どころか挑戦すらなかった。挑戦者決定戦で二度負けたこともあり、このまま出場がないままかと思われたが、40歳にして初の挑戦となった。昨年に名人を失冠してからは調子を落とし気味の印象もあったが、王位戦では持ち前の勝負強さで星を集めてリーグを4勝1敗で優勝。挑戦者決定戦では斎藤慎太郎八段にいい内容で押し切った。無冠になった後は初の挑戦権獲得である。 公式戦での対戦成績は藤井から見て20勝4敗、タイトル戦の番勝負でも5戦全勝と圧倒している。羽生善治九段をはじめ、世代的に前後のどの棋士とも五分以上に渡り合った渡辺が唯一苦しめられている相手だ。20年近くタイトルを保持し続けてきた渡辺だが、藤井には棋聖、王将、棋王、名人と立て続けにタイトルを奪われた。無冠に落とされた因縁の相手だ。 これまでの対局を振り返ると、内容的には熱戦ばかりだが、終盤の競り合いで藤井が抜け出すパターンが多い。渡辺が真っ向勝負で研究をぶつけていく将棋が多かったが、今回はどうなるか。無冠の挑戦者としての立場で藤井と戦うのは初めてであり、これまでとは違った戦いが見られる可能性もある。しかし、基本的には矢倉、角換わり、相掛かりを中心とした相居飛車戦となるだろう。二日制でずば抜けた安定感を誇る藤井の優位はゆるがないだろうが、渡辺はどこにスキを見出せるか。 七番勝負は7月6、7日に始まり、フルセットにもつれ込めば9月末まで掛かる長丁場だ。これまで苦汁をなめさせられてきた渡辺は一矢報いるべく、多くの研究をぶつけてくるだろう。約1年ぶりの対戦に、渡辺はどのような戦いを見せるか注目だ。 文=渡部壮大
HOMINIS