「阿蘇」を世界文化遺産に 熊本県と阿蘇郡市7市町村、東京でシンポ
阿蘇の世界文化遺産登録を目指す熊本県と阿蘇郡市7市町村が11日、東京都文京区で第4回東京シンポジウムを開いた。約260人が参加し、阿蘇の文化的景観の価値を共有し、遺産登録への道筋を探った。 講演した姜尚中・県立劇場館長は「阿蘇で草地と森林、居住地が絶妙なバランスが保たれている背景には、人々が続けてきた伝説と神話、祭祀[さいし]がある。エコノミーとエコロジー、ミソロジー(神話学)が混然一体となった所は阿蘇だけだ」と指摘。「自然と共生する阿蘇には人類の営みの始まりと、これから目指すべき未来がある」と述べた。 世界文化遺産に詳しい筑波大の稲葉信子名誉教授は「遺産登録に重要な『顕著な普遍的価値』を見いだすことが大事だ。阿蘇では世界最大級の火山カルデラを人々が緑の景観に変えてきた。人と自然の関係の多様なあり方が、世界レベルの遺産につながる」と解説した。 稲葉氏や阿蘇草原再生千年委員会の坂本正委員長、木村敬知事らによるパネル討論もあった。「地元の少子化や人口流出、高齢化は著しく、草原の維持は厳しい。コミュニティーの再生が必要だ」「人類は近代以降、生活のスピードが速くなりすぎた。持続可能な社会に見直していくモデルに阿蘇はなり得る」と意見を交わした。(小多崇)