JBCが待った!ボクシングと格闘技の交流緩和路線の是非
またAbemaTVが「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」というテレビ企画をぶち上げているが、その面接、オーディション、スパーリングが本日、13日、大阪にあるプロジムの井岡弘樹ボクシングジムで行われることになり、これもJBCが問題視した。 同企画は、以前行われた亀田興毅、大毅の元世界王者が、素人をどつきまわすというとんでも企画の第3弾。今回は、那須川が大晦日にメイウェザーとのボクシングルールによるエキシビションマッチを戦ったとはいえ、キックボクサーがボクシングルールで対戦するという、とうていボクシング界が容認できない企画。しかも、当初、六島ジム、渥美ジムがオーディション会場としてのオファーをAbemaTVから打診されながらも「認可を受けたボクシングイベントではないため、JBCルールに違反する」と拒否したにもかかわらず、井岡弘樹ジムだけが了承したという経緯がある。 ジムは13日の午前11時から午後8時まで使用され、場所貸しだけでなく参加者にバンテージを巻くことや、スパーリングの審判役などのフォローも打診されているという。テレビ番組や映画のロケなどにボクシングジムが貸与されることは、ままあるが、今回は単なるテレビ番組ではなく「ボクシング」を名乗りながら、統括組織のJBCが認可していない“草ボクシング企画”。実際、すでに引退している大橋ジムの元OPBF東洋太平洋フェザー級王者、元日本フェザー級王者の細野悟氏が、JBCから「望ましくない」との指導を受けて出場を断念したほど、ボクシング界からすれば、センシティブな企画であるにもかかわらず、プロジムの認可を受けているジムが、その企画に場所提供などの協力をすることには問題がある。しかも、同ジムの会長の井岡弘樹氏は、西日本ボクシング協会の前会長である。 他の格闘技に関与することを禁じるJBCルールに抵触しているだけでなく、これについては、他の格闘技との交流緩和路線である日本プロボクシング協会サイドも「いかがなものか」と問題視している。単なるジムの経済活動の範疇を逸脱しているだろう。 そもそも、たかだかオーディションなら独自でどこかの会場を押さえて行えばいいものの、問題が起きる可能性があるプロのボクシングジムに貸出しを打診してくるAbemaTVの見識を疑う。 大晦日にメイウェザーのエキシビションマッチが話題を席巻。今回、パッキャオが、RIZINとプロモーション協力の契約を結ぶなど、格闘技界からのボクシング界へのアプローチが盛んだ。キックボクシングのRISEやK-1などの会場は若者であふれ、シンガポール発の格闘技イベント「ONE championship」が日本初上陸を果たすなど、ボクシング界が格闘技界にマーケティングの面で学ぶべき点は多いが、しっかりとした安全管理や統括組織のない格闘技界と、日本ボクシング界が、どうコミットメントすべきかは別問題。他の格闘界との正式な交流に踏み切るにはルールの整備が必要になるだろう。 今後、JBCと日本プロボクシング協会は、真剣な議論、検証を行い、ボクシング界発展のためには格闘技界とどう付き合っていくべきかのルール作りを進めていく必要がある。ただ、過去を見る限り、格闘技界は栄枯盛衰を繰り返し、権威のあるボクシング界だけが細く長く生き残っているという歴史を忘れてはならない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)