国内で8年ぶりの大規模個展。約9割が新作の『村上隆 もののけ 京都』が見逃せない!
伝統的な絵画表現と、現代のアニメや漫画の平面性を接続させ、日本社会の在り様にも言及した「スーパーフラット」を提唱し、現代美術の最前線で活躍する村上隆。イギリスの『アートレビュー』誌の「Power 100(アート界でもっとも影響力のある100人)」に10年連続で選出され、ル・ブルジェ(フランス)のガゴシアン・ギャラリーやサンフランシスコのアジア美術館などで個展を開き、近年は海外を中心に活動してきた。一方で、江戸時代の絵師たちが活躍し、いまもさまざまな芸能と芸術、祭礼や伝統行事が息づき交わり合う京都にキャリア初期より深い関心を寄せていたという。 【写真多数】国内で8年ぶりの大規模個展。約9割が新作の『村上隆 もののけ 京都』が見逃せない!
村上の京都での初の大規模個展『村上隆 もののけ 京都』が、京都市京セラ美術館新館 東山キューブにて開催されている。会場では岩佐又兵衛の『洛中洛外図(舟木本)』(17世紀)を引用し、村上が描きおろした現代版「洛中洛外図」をはじめ、曾我蕭白(そがしょうはく)の『雲龍図』(18世紀)に挑んだ全⻑18メートルにおよぶ迫力満点の『雲⻯赤変図』、また「スーパーフラット」概念を体現するキャラクターDOBや、NFT(非代替性トークン)アートの考え方から生まれた絵画や立体など、最新のトレンドを含んだ約170点もの作品を公開。さらに十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行で話題となった祝幕の雅やかな原画も展示し、京都だけのオリジナルな「新・村上ワールド」を繰り広げている。
村上版「平安京」が出現!? と思わず圧倒されるのが、暗い八角形の室内に展開する『四神と六角螺旋堂』だ。東西南北を山や川に囲まれた京都は、東の鴨川を青龍、西の山陰道を白虎、南はかつての巨椋池を朱雀、北は船岡山や北山を玄武に見立て、各方面の四神に護られているとされてきた。そこで村上は、四神をモチーフとした巨大な絵画を東西南北の方角にあわせて展示し、中央には「京都のへそ」と呼ばれ、鐘楼が地震や大風といった異変を伝える機能を担った六角堂を題材とした『六角螺旋堂』を設置している。また黄金に染まる『竜頭 Gold』はドクロに象られているが、部屋の壁や床にも無数のドクロが描き込まれている。煌びやかな芸術文化で語られることが多いものの、実は複数の葬送地を抱え、いまよりも死が近かった中世の京都の気配を暗示していると言える。