札幌の冬道には砂をまく? 道路に常備される「砂箱」とは
記録的な寒波の影響で、西日本を中心に厳しい冷え込みや雪に見舞われました。北海道で大雪は珍しいことではありませんが、 ある日、札幌市の道路関係部局に こんな電話があったそうです。 「この間、冬の札幌に行った時に砂があって、滑らなくて済んだんですよね。今、『○○(本州のスキーリゾート)』にいるんですけど、砂がなくて……」 ――砂?
●市民が自由に
札幌市内の交差点や坂道などに設置されているのが、砂袋がたくさん入った小さな箱。この砂袋、札幌市各区の土木センター職員や除雪業者が定期的に巡回し補充しています。実は、この砂袋には「滑り止め材」(粒の大きい砂)が入っていて、滑る雪道にまくと歩行者の転倒や車のスリップが起こりにくくなるのです(ちなみに札幌以外の北海道内にも設置されています)。 特に札幌市中央区は、札幌駅・大通・すすきのというオフィス街・繁華街だけではなく、円山・盤渓など山間部も含む区域であることから、札幌市内にある砂箱3600個の4分の1にあたる約900個が設置されています。札幌市は10区あるので、その割合の大きさが分かるでしょう。
実際ここ5年間の平均値でいうと、札幌市内での雪道転倒による救急車の出動回数(札幌市消防局調べ)は約900件で、うち中央区で約200件となっています。 このような事故を少しでも防ぐために設置されている砂箱ですが、これは市民が自由に砂をまくことができる仕組みで、雪道(特に圧雪アイスバーンが危険)に砂をまくことでほかの歩行者の安全にもつながります。 中央区の砂箱を管理している札幌市中央区土木センターによると、「1袋に3キロの砂が入っているのですが、同じ場所に大量にまくのではなく、少量ずつ広範囲にまいた方が効果的です。また使用済の袋は、砂箱にぶらさがっている袋に入れてください」とのこと。
●「はい」は2割未満
この砂箱、実は1割近くは企業負担により設置されています。また、一部コンビニエンスストアや銀行では、社員が砂まきの協力をしている企業もあります。一般市民と企業が一体となって、転倒防止やスリップ防止に取り組んでいるのです。 また、2012(平成24)年度 からは中央区内のデザイン系専門学校と共同で啓蒙ポスターも制作、公共施設や一部コンビニエンスストアなどで掲示されています。 「過去の調査で、『砂箱の砂を自分でまいたことがある』という質問に『はい』と答えた方が2割未満だったことがあり、今後も砂箱が設置されていること・使用してもらうことについて浸透度を高めていきたいです」(札幌中央区土木センター) 先週は首都圏・東海地方でも雪が積もり、多くの転倒者が出てしまいました。札幌人は雪には慣れていますが、このような工夫をしながら春を待っているのです。 (ライター・橋場了吾)