中東地域での中国の影響力は低下しているか?
イスラエル・パレスチナ紛争への関与に中国は慎重か
米国時間11月15日に開かれた米中首脳会談では、イスラエル・パレスチナ紛争も議題となった。ただし、この問題への中国の関与の度合いは、今のところ当初考えられていたよりも小さいのではないか。 今年に入ってから中国は、サウジアラビアとイランの国交正常化の合意を仲介するなど、中東地域での存在感を一気に高めた。これは、グローバルサウスの国々を取り込む戦略の一環でもあっただろう。また中国は、イスラエルにとって第2位の貿易相手国であるなど、両国は強い経済関係を持っている。 イスラエルとイスラム諸国の双方にパイプがある中国は、事態の改善に向けて一定の力を発揮できる立場にあるようにも思える。しかし、今のところ中国は中東問題で目立った動きをしていない。当面は事態を見守っているということかもしれないが、それに加えて、中国にとって中東地域の経済的重要性が低下していることも、慎重姿勢の背景にあるのかもしれない。
中国の中東地域へのエネルギー依存度は急速に低下
中国は今まで、中東地域からのエネルギー輸入の増加と同地域への直接投資の拡大の2本柱で、中東地域への経済的な影響力を高めてきたが、その流れに変化が生じている。 中国の中東地域からのエネルギー輸入に大きな変化をもたらしたのが、ウクライナ戦争だ。これをきっかけに、中国はロシアからの原油輸入を大幅に拡大し、ロシアが中国への最大供給国になっている。データ会社CEICによると、中国の2023年7-9月期のロシア産原油の輸入量は、前年同期比で42%増加した。これに対し、イラクからの輸入量は6%増にとどまり、また以前は最大の供給国だったサウジアラビアからの輸入量は11%減少した。 中国にとっては、中東から海上輸送で原油を輸入するよりも、ロシアからパイプラインを使って陸上輸送で輸入する方が、都合が良い。中東地域での地政学リスクが高まる際や、中国が西側諸国と軍事的に衝突する際には、シーレーン(海上交通路)はその影響を受けやすいからだ。