さやえんどう・スナップエンドウ・グリーンピース…何が違う?管理栄養士が解説
春先になるとスーパーの店頭に、鮮やかな緑色をした豆類が並びはじめます。さやえんどう、スナップエンドウ、グリーンピースはよく似た形状をしていますが、すべて同じ品種であることをご存知でしょうか?この記事では管理栄養士が、さやえんどう・スナップエンドウ・グリーンピースの違いを解説します。3種類の豆をうまく使い分けて、春のおいしさを存分に味わってくださいね。 〈回答を写真で見る〉さやえんどう・スナップエンドウ・グリーンピース…何が違う? ■実はすべて同じ品種! さやえんどう、スナップエンドウ、グリーンピースはそれぞれ食べ方が異なるものの、緑色のさやに豆が入っている形状は同じです。実はこれら3種類の豆は、マメ科エンドウ属に分類される同じ品種なのです。 3種類の豆の違いは、収穫時期にあります。現在は専用の種から育てられていますが、かつては同じ種から成長させて、時期をずらして収穫していました。 もっとも収穫が早いのはさやえんどう。「絹さや」とも呼ばれており、主にやわらかなさやを食べます。さやの中の実が大きくなり、さやと実の両方を食べるのがスナップエンドウ。さらに成熟したものがグリーンピースであり、別名「実えんどう」と呼ばれるように大きく育った実だけを食べます。 実は、豆苗とエンドウマメもマメ科エンドウ属の仲間です。中華料理などによく登場する豆苗は、種から生えたばかりの新芽を食べます。豆大福やうぐいすあんなどに使われているエンドウマメは、グリーンピースを完熟させたもの。 マメ科エンドウ属の仲間を収穫時期で並べると、豆苗→さやえんどう→スナップエンドウ→グリーンピース→エンドウマメの順になります。それぞれ形が違うのに、同じ豆なんておもしろいですね! ■栄養価を比べてみよう さやえんどう、スナップエンドウ、グリーンピースの栄養価を比べてみましょう。 ◆エネルギー(kcal) さやえんどう 38 スナップエンドウ 47 グリーンピース 76 ◆たんぱく質(g) さやえんどう 3.1 スナップエンドウ 2.9 グリーンピース 6.9 ◆脂質(g) さやえんどう 0.2 スナップエンドウ 0.1 グリーンピース 0.4 ◆糖質(g) さやえんどう 4.5 スナップエンドウ 7.4 グリーンピース 7.6 ◆食物繊維(g) さやえんどう 3.0 スナップエンドウ 2.5 グリーンピース 7.7 ◆β-カロテン(μg) さやえんどう 560 スナップエンドウ 400 グリーンピース 410 ◆ビタミンB1(mg) さやえんどう 0.15 スナップエンドウ 0.13 グリーンピース 0.39 ◆ビタミンC(mg) さやえんどう 60 スナップエンドウ 43 グリーンピース 19 100g当たりの栄養価で比べると、さやえんどうはβ-カロテンやビタミンCが豊富です。β-カロテンとビタミンCはどちらも抗酸化作用を発揮して、体を酸化させる活性酸素を除去します。そのためさやえんどうは、体の酸化が原因になる生活習慣病や老化の予防に役立つでしょう。 グリーンピースは食物繊維とビタミンB1が多めです。食物繊維には整腸作用に加えて、血糖値の上昇を緩やかにする作用があります。またビタミンB1は、糖質をエネルギーに変換する働きをサポートします。 糖質が多めの食事のときはグリーンピースも一緒に摂取すると、血糖値の上昇を抑えながら糖質をスムーズに代謝できるでしょう。ただしグリーンピース自体にも糖質が多く含まれるため、食べ過ぎには注意が必要です。 さやと実の両方を食べるスナップエンドウは、栄養価もさやえんどうとグリーンピースの中間といえますね。 3種類の豆はどれも、ひとさや当たりの重さは数g程度。栄養を十分に得るには、料理にたくさん使用してたっぷり摂取する必要があります。旬を迎えて流通量が増加している時期に、しっかり摂取しておきましょう。 ■おすすめの食べ方 さやえんどうは、ビタミンCを逃さないために加熱はほどほどに。またβ-カロテンは、油と一緒に摂取すると吸収率が高まります。炒め物の仕上げに加えて、さっと火を通すのがおすすめです。 スナップエンドウは、歯触りのよい食感と甘みのあるさやが特徴的。さっとゆでてサラダにすると、スナップエンドウのおいしさを堪能できます。 実は苦手な人が多い、グリーンピース。缶詰や冷凍のものは青臭さがありますが、生の状態で出回っているグリーンピースは味が濃くて甘みがあります。 生のグリーンピースでぜひ食べてほしいのは豆ご飯です。フレッシュな風味をシンプルに楽しめて、ご飯に効かせたほのかな塩味で豆の甘みも引き立ちます。豆ご飯をつい食べ過ぎてしまっても、グリーンピースに豊富な食物繊維とビタミンB1の効果で、血糖値や肥満への影響も少しは抑えられるかもしれません。 さやえんどう、スナップエンドウ、グリーンピースの鮮やかな緑色を目にすると、春の到来を感じます。旬を迎えた野菜は風味が豊かになり栄養価も高まるので、おいしい時期にたくさん食べてくださいね。 【参考文献】 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 公益財団法人 日本豆類協会「豆の種類別特徴 えんどう」 白鳥早奈英. 坂木利隆. もっとからだにおいしい野菜の便利帳.高橋書店.2011. ライター/いしもとめぐみ(管理栄養士)
いしもとめぐみ