森雪之丞、自選詩集『感情の配線』出版イベント（写真＝市岡光子）

 　シブがき隊や浅香唯などのアイドル、『ドラゴンボールZ』をはじめとするアニメソング、サディスティック・ミカ・バンド、布袋寅泰、氷室京介といったロックアーティストなど、幅広いジャンルで2700曲を超える歌詞を手がけ、近年は舞台やミュージカルの世界でもオリジナル作品を次々と生み出している作詞家の森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』を上梓した。その出版を記念し、1月25日に記者発表会とトーク＆リーディングイベントが代官山 蔦屋書店のイベントスペースにて行われた。 【写真】花束を受け取る森雪之丞 　イベントに先駆けて行われた記者発表会では、今回の詩集を制作するに至った経緯や詩集に込めた思いなどが語られた。 　まず、森は、今回の詩集をつくり始めた経緯についてトーク。「まさか自分が70歳になるとは」と、自身の年齢に驚きを隠せない気持ちを語り始めると、「仲間たちがみんな天国へ逝ってしまって。ちょっと弱気になっていたんですが、布袋くんにLINEで『そろそろ俺、シュウカツしようかな』と送ったら、就職活動の“就活”になってしまって（笑）。これはやっぱり、もうちょっとやれっていうことかなと。70歳になった自分に喝を入れるつもりで、今まで書いた作品を集めた詩集をつくりました」と、詩集の出版を考えたきっかけを明かした。そして、今回制作した詩集に収める詩は、若者も含めて現代を生きる人に届くようなものにこだわり、森が自ら選んで1冊にまとめたという。 　続いて、1月14日に古希を迎えた感想について司会者より質問があると、森は「60代はすごく楽しい60代だったんです。それまで自分がやってきたことをいろいろ形にできる60代で」「でも、70代は新しいジャンルだなと思っています。身体のことを心配しないといけないだろうし」「身体がもつ限り、グレードの高いものを作っていけたらなと思います」と、70代を迎えても精力的に創作活動を行っていくつもりであることをコメントした。 　そして、森がこれまで手がけてきた中でも、特に印象に残っている仕事に関して質問が投げかけられた。森は昨年、これまでに2700曲も手がけてきたことを自らカウントして明らかにしたといい、その中でも特に布袋寅泰との出会いは、「人生を変えた」「布袋寅泰と出会って、書きたかったロックの世界で、彼に詩を託せたのは大きかった」としみじみと振り返った。また、ポップスではシブがき隊の名前も挙がった。「〈ジタバタするな〉とか〈世紀末が来るぜ〉とか、アイドル用語辞典に乗ってないものをやれたのは、自分の使命だったのかなと」と、アイドルソングにおける森らしい作詞のスタイルが世の中に与えた影響についても言及した。 　さらに、70～80年代の音楽業界はチャートへのランクインが重要視されていたことから、「もっと自由に言葉を遊べる世界がないかと思ったときに、（アニメの世界との出会いは）僕にとっては本当に水が合った」と、アニメソングの作詞に携わり始めたきっかけをトーク。アニメソングの中では、特に『ドラゴンボールZ』のオープニングテーマとして起用された「CHA-LA HEAD-CHA-LA」の作詞に思い入れがあると言い、「僕だからとんでもないものが書けたと思います」「英語的な日本語を、どうロックに乗せるのかは、自分の中でテーマだったので」と、今もなお自信作であることを語った。 　近年力を入れているミュージカルについても、「ミュージカルって、総合的に形にしていくおもしろい世界だと思う」「20年以上、舞台の仕事をしていたら、皆さんがミュージカルを愛してくださるようになって嬉しい」と、舞台の仕事にかける想いについても熱を込めて語った。 　70歳を迎えた今、これからトライしたいことについて尋ねられると、森は「ミュージカルは立ち上げから完成までに大体4年かかる。もうあと1本くらいかなと。最後に、画期的なミュージカルを1本つくりたいと思っています。新しい詩集もやっていきたいです」と今後の抱負を述べた。 　記者発表会の最後には、森の70歳の誕生日を祝うサプライズが行われた。トーク＆朗読イベントに登壇し、現在俳優や声優、歌手など各方面で活躍する牧野由依、猪塚健太、礒部花凜が森のもとへと登場。3人で花束を渡して、それぞれがお祝いの言葉を森に贈った。 　礒部は、『感情の配線』について、「言葉の背景も頭の中に浮かんでくるように素敵な詩がたくさん入っていて」「これからも（森の）ファンでいたいです」とコメント。猪塚は「70歳の誕生日、おめでとうございます」と改まった様子で話すと、森から「あんまり言うなよ！」と、気さくな様子で猪塚にツッコミを入れ、場を和ませた。牧野も改めて森の古希を祝いつつ、詩集について「毎日一編ずつ楽しめたりとか。私の人生の中で大事なときに支えてくれる言葉がたくさん詰まっているんじゃないかと思います」と、森の詩集に魅せられたポイントを語って、記者発表会を終えた。