気鋭の演出家・加藤拓也が心の揺らぎを描写 門脇麦主演、映画「ほつれる」ブルーレイ発売
映画「ほつれる」は、演劇界で注目を集める気鋭の演出家・加藤拓也による監督作品。監督デビュー作「わたし達はおとな」に続いてオリジナル脚本も手掛けた。門脇麦を主演に夫との関係が冷め切っているヒロイン・綿子の繊細な心の揺らぎをつづるヒューマンドラマだ。加藤は「一見、非合理に見える登場人物に思いを寄せて見てほしい」と語る。 ■同じテーマで全く違うアプローチ 岸田國士戯曲賞、読売演劇大賞演出家部門賞と演劇界で主要な賞を次々獲得している加藤。映画「ほつれる」は、昨年5月に上演された舞台「綿子はもつれる」と同じシチュエーションで作られている。 「映画『ほつれる』と舞台『綿子はもつれる』では、物語の発端は同じですが、迎えている結末は全然違います。そこに至る過程も、たとえば映画では旅に出ることで、舞台では他人を使って、それぞれ自分と向き合う作業をしている。同じテーマに対して全く違うアプローチをしています」 夫・文則(田村健太郎)との関係がすっかり冷え切っている綿子(門脇麦)は、友人の紹介で知りあった男性・木村(染谷将太)と頻繁に会うようになる。しかし、あるとき木村は綿子の目の前で事故に遭い、帰らぬ人となってしまう。心の支えとなっていた木村の死を受け入れることができないまま、日常を過ごす綿子。夫や周囲の人々との関係に揺れ動く心を抱える綿子は、木村との思い出の地をたどる。 ■黙っているときの情報量 主演の門脇は、夫とのつながりが〝ほつれる〟さまを、まるでドキュメンタリーのようなリアルさで演じている。加藤は「門脇麦さんはしゃべっていないときの情報量が多い。黙っているときのたたずまいや雰囲気、表情が魅力でした。それが人によってはさまざまなニュアンスに取れるところもいい」と絶賛する。 映画は昨秋に公開。4月にブルーレイとDVDが発売となった。ソフト化されたことで繊細に揺れ動く綿子の心情をじっくりと見ることができる。 「主人公の綿子も、綿子の不倫相手の木村も、綿子の夫・文則も、他者から見たら一見非合理に思える行動をとっている人たちですよね。そういう非合理に見える登場人物を拒絶するのではなく、何故そのような行動を取っているのかということに思いを寄せて、見ていただければと思います」