今年も優勝はうぬぼれていない阪神、巨人か広島がこれを追う/廣岡達朗コラム
目の奥まで笑っていない
キャンプも終盤に差し掛かってきた。テレビでキャンプ中継を見ていると、ただ一生懸命にやっているか、優勝するためにやっているか、その違いが私にははっきりと分かる。 【選手データ】松井秀喜 プロフィール・通算成績 優勝予想には少し早いが、今年もセ・リーグは阪神が優勝するだろう。あとを追うのは巨人か広島だと思う。今の状態のままだと中日は今年も最下位だ。 阪神は昨年日本一になったからといって選手たちがうぬぼれていないのがいい。立ち姿、歩き方、走り方はもちろん、笑い方まで違う。笑っていても目の奥までは笑っていない。高い競争意識の中での笑いだ。 初の紅白戦では主力クラス、ルーキー、外国人が区別なく、横一線で出場していた。岡田彰布監督はバックネット裏から試合を凝視。これ以上の“御前試合”もない。監督というのはこうした存在感が必要。さっきまでブルペンにいたのに、いつの間にか別の場所にいるという具合に、常に目を光らせておかなければいけない。 昨年まで2年連続Bクラスに甘んじた巨人が優勝するのは大変だ。なぜかというと坂本勇人、岡本和真という主力が若手に対して睨みがきかないからだ。 岡本は川上哲治さんのようなリーダーにはなれない。というのは貫禄、威厳を感じない。性格的なものもあるのだろうが、もっとナインを引っ張る姿勢が欲しい。一方、ベテランの坂本はセンスこそあるが、後輩に対して技術的なアドバイスを送るタイプではない。自分の持っている技術を後輩に惜しげもなく披露すれば、自分はそれより上に行かないといけないと思って結果的にうまくなるのだ。
秋広を一人前にできるか
松井秀喜が6年ぶりに巨人の臨時コーチを務めたが、彼は“枝葉”を教え過ぎる。選手が考えなくていいところまで考えさせるから、あれでは打てなくなる。松井の指導を受けた秋広優人はスイングにスムーズさがなくなった。彼は構えたところからテークバックして豪快に振り抜けば、強い打球が打てる。夢中で打たせるところに練習の意味があるのに、これでは打撃フォームをバラバラにさせているだけだ。 松井の指導者経験のなさが露呈した格好だ。自分が現役時代にこうしたからと言ってヘタに分解して教えるから間違う。重心を上ではなくヘソの下に置けと言って教えればいいのだ。秋広を一人前にできるかどうか、これが今季の巨人の浮沈のカギを握る。