「日本人の給料」は安いのか…?意外と知らない「人手不足の深刻化で起きていたこと」
この国にはとにかく人が足りない!個人と企業はどう生きるか。人口減少経済は一体どこへ向かうのか。 【写真】いまさら聞けない日本経済「10の大変化」の全貌… 話題書『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』では、豊富なデータと取材から激変する日本経済の「大変化」と「未来」を読み解く――。 〈日本経済はいま、長く続いたデフレーションの出口に立っている。 これからの物価上昇の原動力となるのは、構造的な人手不足とこれに伴う賃金水準の上昇である。 日本経済の構造が変化するなかで賃金はその行方を左右する重要な変数になっており、長期的な視点に立てば、人手不足の深刻化による労働市場のさらなる需給ひっ迫は、今後も継続的な賃金上昇を引き起こすことになるだろう。 このように考えれば、人口減少経済の行く先を予想することはそう難しいことではない。今後は賃金上昇を媒介として労働者の労働参加はさらに拡大し、その一方で企業は省人化に徹底的に取り組むことを強いられる。市場メカニズムが人手不足を解消するために必要な調整を促す展開になるのである。〉(『ほんとうの日本経済』より) いま、日本では賃金が上がり始めている。 いつから、何が、起きているのだろうか。 〈上昇基調に転じ始めたのは2010年代半ばだ。実質時給は2014年に2221円で底をついたあとじりじりと上昇していき、2020年には2347円まで緩やかに伸びていて、年収とは逆の傾斜を描いていた。 足元では、円安進行による輸入物価上昇などからまた実質賃金は低下基調に転じているが、現下の円安は日本銀行の大規模金融緩和や海外要因による影響が大きく、外生的で短期的な側面も強いと考えられる。 名目の時給水準をみると、労働市場の局面変化がより鮮やかに浮かび上がる。先のグラフには名目の時給水準も掲載しているが、名目時給は2012年の2138円を底に単調に上昇を続けている。 2023年には2418円と、この10年間で12.2%の増加となった。1990年代半ばから2010年代前半までの期間と、2010年代半ばから現在に至るまでの期間とでは明らかに局面が変わっている。賃金は長い低迷期から脱出し、上昇基調に転じているのである。 近年、時給が上昇しているのは、年収が微増にとどまる一方、労働時間が大幅に減ってきたからだ。同じく10年前と直近の数値を比較すると、年間総実労働時間は1753時間から1653時間へと大きく減っている。つまり時給が上がっているのに、収入が上がっていないという認識が生まれるのは、労働時間が大幅に減っているからだといえる。 時給上昇という果実を労働時間の縮減に使うか、年収の増加に使うかという意思決定はあくまで働く人それぞれの選択である。より短い時間でそれなりの報酬を得たいという人が増えたから、現在のような労働時間の減少を伴う賃金上昇が起きているのである。〉(『ほんとうの日本経済』より) つづく「多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体」では、失われた30年を経て日本経済はどう激変したのか、人手不足が何をもたらしているのか、深く掘り下げる。
現代新書編集部