見たことのない車台番号、存在しないボディカラーに普通なら付かないであろう跡。この車両は一体?
取材車両のオーナーは16年前、中古車雑誌に載っていた取材車両に一目惚れし購入。長らく愛用していたがその後他のキャラバンを購入したため長期間放置。再び乗るためバラクーダ代表飯田さんにレストアを依頼し、車両について調べてみると「あやしい」ことが… 【画像20枚】インパネはGTリムジン純正だが、前期にこのカラーリングはない。通常はブルーまたはレッドとなる。ちなみに中期でインパネまわりを曲線基調のデザインに一新している 【ワンボックパラダイス 1989年式 日産 キャラバン コーチ リムジン エグゼクティブオフィス】 まず車台番号。この個体はなんと2桁の10番台なのだ。通常、これほど小さい番号は製造テストなどで消化されるため市場に出回ることはない。どのような経緯で流出したのかは不明だが、存在しないはずの車両なのである。 次に仕様。オーナーのアンテナにこの個体が引っかかった理由でもあるのだが、この年式(89年式)にはグリーンは存在しない。しかもこの個体はロイヤルとして販売されていたのだが、それは90年のマイナーチェンジ時に追加されたグレードだ。室内では、2列目シートのフロアに太いボルトがあり、サイドの壁側には「何か」が付いていたであろう跡が残っていた。こういった「?」な部分が多かったこともあり、飯田さんは八方手を尽くしてこの個体の真相を調べたのだった。 そしてひとつの結論にたどり着く。この個体は89年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー、「エグゼクティブオフィス」なのではないか。実際、当時の資料にはグリーンのキャラバンが掲載されている。その仕様は2列目が取り外されて、大きく豪華なシートが一脚鎮座し、壁側には小さなテーブルが備え付けられている。フロアのボルトや壁の痕跡はそれだったのだ。この事実を知ったオーナーは手放すことをやめて、89年東京モーターショー仕様に復元することを決意。作業はバラクーダに全面的に任された。 主要諸元 specifications 1989年式 日産 キャラバン コーチ リムジン エグゼクティブオフィス 全長×全幅×全高(mm) 4520×1690×1945 ホイールベース(mm) 2375 トレッド前/後(mm) 1450/1415 車両重量(kg) 1840 エンジン型式 VG30E型 エンジン種類 V型6気筒SOHC 総排気量(cc) 2960 ボア×ストローク(mm) 87.0×83.0 最高出力(ps/rpm) 155/5200 最大トルク(kg-m/rpm) 25.0/3200 サスペンション前/後 ダブルウイッシュボーン/リジッドリーフ ブレーキ前/後 ベンチレーテッドディスク/リーディングトレーリング タイヤ 205/65R15(前後とも) ※スペックはすべてGTリムジンのもの。 初出:ハチマルヒーロー 2017年5月号 Vol.41 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
Nosweb 編集部