「一気に和山やま作品のとりこに」映画『カラオケ行こ!』で綾野剛が追求した究極の“かみ合わなさ”
敬意をしっかり持ち、向き合い続けました
――テンポやリズムを意識的にずらしたということですか? なんのために? 本作では「かみ合わない」のが完成形だからです。『初めて会ったヤクザにいきなりカラオケに連れてこられた15歳』という状況で、両者の会話がかみ合うはずがないのです。台本も台詞も存在し、どうすれば良いか分かっている状況で「かみ合ってはいけない」というオーダーはとにかく大変でした。 ――原作では、中学生の聡実くんとヤクザである狂児が一緒にカラオケボックスにいる、つまり「かみ合わないふたり」が同軸に存在することが、前提条件になっています。「ふたりでいる」という設定を「かみ合わない」ものにするには、デフォルトを崩す必要があるということですか? 『カラオケ行こ! 』は現実にはあり得ない劇的な設定を、自分事のセリフで表現することで「なさそうで、ある」と感じられる絶妙なリアリティを生み出しています。その『カラオケ行こ! 』の世界観のなかにしかないリアリティを本作ではどのように表現していくか。そこも含めて、全部署が原作に対する敬意をしっかり持ち、「映画化」と向き合い続けました。
俳優、制作陣に共通した思い
――マンガの世界そのままに、かみ合わないふたりがかみ合っているように見えるのが実写化で、かみ合わないことを追求した、山下監督の新挑戦が今回の映画化と考えればよいのでしょうか。いつもの綾野さんとは違った、「かみ合わない」演技にも注目ですね。 岡聡実役の齋藤潤くんは真っ白な状態で挑戦してくれましたが、僕らもこれまでの経験値を恐れず捨てて、芝居の「かみ合わなさ」をひたすら追求しました。本作は、その体感した事のない気まずい空気感がひたすら漂い続けます。不安に思う方がいらっしゃるかもしれませんが、その不安こそが聡実くんを知る上での大切なスパイスになります。毎度新たなスパイスが織り込まれ最後の最後で効いてくる。本作にしかない調合を楽しんでいただけたら幸いです。 ――作品の見どころについても教えてください。 たおやかな、とても温かい青春映画です。当時、齋藤潤くんは役と同じ15歳で、撮影中に変声期が来て背も伸びて。そんな彼の魅力を描こうとみんなで想いを集結させた現場でした。ぜひ岡聡実と齋藤潤の成長を、この作品を通して見ていただけたら幸いです。きっと胸に響く作品になっていると思います。 綾野剛(あやの・ごう) 1982年1月26日生まれ。岐阜県出身。2003年、ドラマ『仮面ライダー555ファイズ』で俳優デビュー。12年公開の映画『横道世之介』で、『第37回日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。そのほか多数の作品に出演。音楽や写真などといったカルチャーにも造詣が深い。 衣装クレジット コート 968,000円、シャツ 246,400円、パンツ 122,100円、シューズ参考商品/すべてヴェルサーチェ(ヴェルサーチェ ジャパン www.versace.jp) その他本人私物
相澤洋美