吉田沙保里は階級変更に耐えられるか?
元々、55キロでは軽かった
レスリング競技にとって2013年は五輪の中核競技からの除外騒動から始まり、2016年リオデジャネイロ五輪までの新ルールと新階級が決まった衝撃で締めくくられるようだ。2014年1月1日から実施される新ルールと新階級決定の報告記者会見の席で、女子の階級増そのものは喜ばしいが、他の決定にはすべて困惑しているという表情を隠さず、福田富昭・日本レスリング協会会長は次のように述べた。 「五輪4連覇を目指させる選手のことを考えると不安を感じている」 女子の新しい五輪実施階級は下から48kg、53kg、58kg、63kg、69kg、75kgとなった。前出の福田会長の言葉は、五輪を3連覇して、なお現役続行中の吉田沙保里と伊調馨を念頭に置いての言葉だ。特に55kg級という勝ち続けた階級が消滅した吉田についての不安だと受け取った人も少なくないだろう。 今回、発表された新階級はずっと噂されてきた案のとおりであり、それほど意外性はない。そのため、これまで吉田は「53kgならちょうどよい」など変更後についての言及をことあるごとにしてきた。なぜ、ちょうどよいのか。それは、吉田の体重がいつも55kg級に少し足りないくらいの重さしかなかったからである。 子どものころから食に積極的ではなかったと母が言うとおり、吉田の食事は運動量を考えると普段から少なめだ。初めての日本代表を目指していた大学入学直後は、体づくりのために食事を改善することも大きな課題のひとつだった。練習をしないとアスリートは太りがちだが吉田は逆に体が小さくなる。実際にロンドン五輪後に約半年、休養したあとに出場した全日本選抜選手権での姿は以前より二回りほど小さく見えた。 長い休養後でなくとも、実は試合のときには55kgに少し足りなかったと優勝してから明かされたこともたびたびあった。「55kgに足りないくらいがいつもの吉田だ」という認識は、彼女の情報を追ったことがある人間であれば共通認識だ。 それでも、これまでより軽い階級へ合わせることへの不安が去らないという見方もある。しかし重い階級へ合わせるよりも、減らして軽くする方が現実的なのだ。