大切な人を失った人々の心に寄り添って…スズ子が「大空の弟」を青空の下で熱唱、そこに込めた思いとは【ブギウギ】
『ブギウギ』(NHK総合)第14週「戦争とうた」の1月5日放送回(第66話)では、8月6日広島に原爆が投下され、終戦に向かおうとするなかで、スズ子(趣里)と茨田りつ子(菊地凛子)がそれぞれ歌と向き合う姿が描かれた。 【写真】静枝に公演を見に来て欲しいと伝えるスズ子 スズ子が巡業で訪れた富山県高岡市には、近隣の富山市で大空襲に見舞われた人々が避難してきていた。スズ子は、空襲で大切な人を失った人々、そして家族を兵隊に取られて亡くした人たちに向けて、青空の下『大空の弟』を語りかけるように歌う。 第49話(12月7日放送)にて、りつ子との合同コンサートで初披露した同曲とはまたアレンジの違う『大空の弟』。原曲の作詞作曲者であり、羽鳥善一(草彅剛)のモデルでもある服部良一さんの孫で、『ブギウギ』のためにこの曲を蘇らせた服部隆之さんによれば、原曲の楽譜には「歌」と「手紙の朗読」部分があり、途中で「軍歌調のマーチ」に変化するという複雑な構成になっているのだという(※12月22日放送のNHK総合『あさイチ』より)。 66話で、スズ子が亡き弟・六郎(黒崎煌代)の手紙を朗読する部分も含めて披露された『大空の弟』と、このシーンに込めた思いについて、制作統括の福岡利武さんに聞いた。 ■ 福岡さんは、スズ子のモデルである笠置シヅ子さんが戦時中に地方で『大空の弟』を歌って、多くの人に共感されたという逸話を明かし、こう続けた。 「戦争で大切な人を失った当時の方々の思いと、『大空の弟』をリンクさせたいということで、今週担当の福井(※編註:チーフ演出・福井充広さん)が、『間奏で手紙を読むところを入れたい』というアイデアを出してくれまして。それならばぜひ、空が見えるところでロケをしたいということで、あのシーンができました。49話の、ステージで披露した同曲とはまたアレンジも変えて、テンポもアップさせています」。 夫を兵隊に取られて亡くした旅館の仲居・静枝(曽我廼家いろは)のエピソードが心に残る。スズ子が歌う『大空の弟』を聴いて、静枝がそれまで胸の奥に押し込めていた感情があふれ出した。「戦争とうた」──今週の週タイトルが、重く響いてくる。 取材・文/佐野華英