消費増税に賃金の鈍い伸び 国内景気の“肌寒さ”は続くのか
街角景気と呼ばれる「景気ウォッチャー調査」と消費者マインドを反映する「消費者態度指数」は、それぞれ2か月連続、9か月連続での悪化となりました。10月の消費税増税を控え、今後の日本経済、日本株はどうなるのか。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】消費者マインド悪化 消費増税なら景気は落ち込むのか?
街角景気、消費者マインドともに低下
株価と関係の深い景気ウォッチャー調査と消費者態度指数の悪化が顕著です。8日に発表された6月の景気ウォッチャー調査と、それに先立って発表された消費者態度指数は双方とも国内景気の肌寒さを浮き彫りにする結果でした。 景気ウォッチャー調査は、消費者に近い立場でビジネスを展開する人を対象に景気の「現状」と「先行き」の認識を示してもらう経済指標。調査回答者(=景気ウォッチャー)は商店街代表者、スーパーやコンビニエンスストア、百貨店の店員、飲食関連スタッフ、タクシードライバーなど景気に敏感な人々が中心です。 その景気ウォッチャーが示した景気の「現状判断」と「先行き判断」は、双方とも2016年半ばごろと同水準に低下しました。また、消費者が調査対象である消費者態度指数は9か月連続で低下して2014年秋ごろの水準へと沈みました。2014年秋といえば、消費増税と輸入物価上昇が重なり、消費者物価(消費税込み、※帰属家賃を除く総合)が約4%も上昇し、消費者の節約志向に火が付いた局面です。 ※帰属家賃…家賃の支払いが実際にはない持ち家などの住宅にも、家賃の支払いが生じたものとみなして計算された家賃のこと。
可処分所得の伸び緩く、すぐの好転は難しい?
こうしたマインド指標の悪化と相反する形で5月の消費支出(住居などを除いたベース)が前月比+5.5%と急増したことに鑑みると、6月のマインド指標の弱さは10連休の消費疲れ、あるいは老後生活資金2000万円問題によって誇張された可能性はあります。 ただし、それでも10月の消費増税を控えて消費者の節約志向が強まっているのは事実でしょう。この数年、雇用環境は劇的に改善した反面、賃金の伸びは鈍く、税と社会保険料を考慮した(一人当たりの)可処分所得の伸びは緩慢でした。また、今夏のボーナスは前年比で微減する見込みです(当社予想は前年比▲0.8%)。この状況で国内景気の肌寒さが直ちに解消される見込みは低いと判断せざるを得ません。 日本経済の肌寒さは、日本株にも反映されています。日本株は、日経平均株価が2万円を割れていた年初からみれば持ち直し傾向にありますが、一方で史上最高値を更新する米国株との比較では遅れが目立ちます。このことは、日米相対株価(日本株÷米国株)と景気ウォッチャーに連動性が認められていることから判断して、国内景気の鈍さに原因が求められます。 筆者は、2020年前半ごろまでに世界的な半導体不況が終わることで、日本株が上昇傾向に復するとの見方を維持していますが、同時に消費増税後の消費不振によって、日本株が遅れをとる展開にも注意しています。
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