家族旅行や外出、難病や障害あっても大丈夫 車椅子ごと乗れて看護師も一緒の大型バス
北佐久郡御代田町の訪問看護ステーション「MedicalSupportTeam(メディカル・サポート・チーム)」は、車椅子の人がそのまま乗れるよう改造した「リフト付き大型バス」の本格運用を始めている。重度障害や難病の人が気軽に安心して旅行や外出をできるよう、看護師が必ず同乗する。車椅子で乗れるタクシーなどは県内各地を走っているが、県看護協会によると訪問看護ステーションによるリフト付きバスの導入は県内初とみられる。 【写真】車椅子の人3人が乗れるように改造した車内
6日、眼前に八ケ岳の山並みが連なる佐久市の温泉施設「平尾温泉みはらしの湯」前の広場。筋ジストロフィー(筋力が徐々に弱くなる難病)患者の土屋伸二さん(55)=佐久市=が眺望を楽しむためこのバスで訪れた。記者が「いい景色ですね」と声をかけると、病気のため話せない土屋さんはゆっくりとうなずく。関係者によると、土屋さんがこのバス以外で外出する機会はほとんどない。
バス導入のきっかけは、ステーションの利用者で車椅子を使う高齢の女性から「家族と旅行したいが、迷惑をかけてしまう」と聞いたこと。管理者の瀬田与徳(よしのり)さん(41)は「在宅療養の利用者の外出支援を進めて、事業所の特色としてアピールしたい」と、約1年前にバスを買った。準備や試験運用を経て、11月に本格運用を開始した。
車両をバスにしたのは、揺れが少ないため利用者が疲れにくく、たん吸引などもしやすいから。車椅子は3台乗り、家族や患者のヘルパーらは計6人まで付き添える。医療機器用バッテリーや冷蔵庫、カラオケなども設置した。
利用費用は看護師の人件費のみだが、変動制。利用者や家族の経済状況に応じて決める。例えば、3人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者が長野市―上田市間を往復したときには1人1万円とした。1カ月以上前の予約が必要で、原則移動中のケアが必要な人に限る。県外への旅行や宿泊を挟んだ利用も可能で、ステーション利用者以外も受け付ける。
瀬田さんは「外出を諦めている人の行動範囲を広げて、生きる希望につなげたい」と話す。問い合わせは同ステーション(電話0267・32・5730)へ。