アングル：日本株は上振れにらみ、4万5000円予想も 専門家相次ぎ修正
Hiroko Hamada Noriyuki Hirata ［東京 ９日 ロイター］ - 東京株式市場で日経平均株価は今年１─３月に急騰を演じ、上げ幅は四半期ベースで過去最大となった。多くの市場関係者が昨年末に予想した高値水準を早くも上回った。「想定外の株高」の背景と今後の見通しを有力ストラテジスト９人に聞いた。 今年の高値では４万５０００円の予想も出ている。一方、米国でのインフレ再燃や、過度な円安進行といったリスクの火種は消えておらず、先行きは予断を許さない、との指摘もあった。 ＜堅調な米景気、「良い誤算」＞ １─３月の株高の要因として、アンケートでは、１）堅調な米経済と米国株、２）国内の企業改革の進展、３）円安による業績改善、など複数の好材料が重なった様子が浮かび上がる。 「米景気が思ったよりも堅調で、外需企業を中心にデマンドが強い。国内では企業改革が進んだことに加えて円安で企業業績も良好。まさに日本株にとって『良い誤算』になった」と、ＪＰモルガン証券のチーフ株式ストラテジスト、西原里江氏は語る。西原氏は、日経平均の２４年の高値を２３年末時点で３万５０００円と予想していたが、現在は４万４０００円に引き上げている。 米経済の動向について、２３年末時点では２４年の利下げ回数の市場見通しが６回ほどだったと大和証券日米株チーフストラテジスト、坪井裕豪氏は指摘し「年前半にＧＤＰ成長率が鈍化するとみていたが、実際には潜在成長率を上回るような堅調な経済成長が続いた」と振り返る。米国の利下げ見通しの後ずれにより、日銀が金融正常化を進める中でも円高進行が回避された点も予想外だったという。 空前の「生成ＡＩ（人工知能）ブーム」による米株高に日本株が追随したほか、東証の要請を踏まえた企業改革の進捗も想定を上回った。同期間中には「これまでになく多くの企業がＲＯＥ（自己資本利益率）や資本コストに言及し始め、企業内での意識が高まってきた」と、ＵＢＳ ＳｕＭｉ ＴＲＵＳＴウェルス・マネジメントの日本株ストラテジスト、小林千紗氏はみている。 賃金と物価の好循環への期待が高まったことも追い風になった。３月の金融政策決定会合で日銀は政策正常化に踏み切っており「日本経済のデフレ体質脱却への期待が日本株を支えた要因の一つだった」（野村証券の市場戦略リサーチ部長、池田雄之輔氏）という。 ＜切り上がる予想＞ 足元で、アナリスト８人の日経平均の高値予想の平均値は、当初の３万８６２５円から４万３０８７円へと引き上がっている。 もともと４万円の大台は決して遠くないと予想していたマネックス証券のチーフ・ストラテジスト、広木隆氏も、日本の成長の芽が出てきたことで想定以上にバリュエーションが早く切り上がったとみている。「日経平均は決算シーズンを経た年央には４万２０００円を上抜けるだろう。年末には４万４０００―５０００円をみている」と見通しを引き上げている。 ゴールドマン・サックス証券のストラテジスト、建部和礼氏は「円安による業績の上振れに加え、変革に対する投資家の確信が一段と高まれば、想定よりもバリュエーションが上振れる」と話す。 ＜リスクは米インフレや円安進行＞ 先行きのリスクもある。海外発としては、米インフレの長期化リスクだ。ＳＭＢＣ日興証券・チーフ株式ストラテジスト、安田光氏は、米国の利下げが後ずれして米金融機関の貸し出し態度が厳格化されると、製造業の設備投資など、企業活動の進展が遅れる可能性があるとみる。 国内では、円安進行に歯止めがかからなくなり、日銀が市場の想定より早く利上げに踏み切るリスクも意識される。シティグループ証券の株式ストラテジスト、阪上亮太氏は、円安によるスタグフレーションを懸念する。新ＮＩＳＡによる個人マネーの海外流出や国内企業による海外企業のＭ＆Ａなどで、円安が構造的になればインフレが想定以上に高くなるリスクがあるという。 足元の日米株価は過去最高値圏にあり、高値警戒感もつきまとう。「（年初からの株高は）いいとこ取りの側面がある。わずかなリスクが顕在化することで、市場心理が急速に冷え込みかねない点には目配りが必要」とニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏は指摘している。 ◎〔情報ＢＯＸ〕1―3月「想定外の株高」背景と24年見通し ここが注目ポイント （浜田寛子、平田紀之 編集：橋本浩）
