「子どもの虫歯予防のため」だけじゃない! 高齢者こそ取り入れてほしい「フッ素」 その理由とは
[県歯科医師会コラム・歯の長寿学](346) 「フッ素」はよく耳にすると思いますが、「子どもの虫歯予防のために塗布するもの」と考えていませんか? 歯の一番外側を覆っている硬い層をエナメル質といい、人の体の中でも一番硬い組織です。硬さの段階を1から10まで分類するモース硬度というものがありますが、歯のエナメル質はモース硬度6~7で水晶と同じくらいの硬さだそうです。 歯の根っこの表面を覆う組織をセメント質といい、モース硬度は4~5。人の骨の硬さと同じくらいなので、エナメル質の硬さがよく分かると思います。エナメル質やセメント質はこれほど硬いのですが、毎日食事の度に虫歯になる危機にさらされています。 歯に付いた歯垢(しこう)(プラーク)に含まれている虫歯菌が酸を作り出すことで、歯の表面からカルシウムイオンやリン酸イオンが唾液中に溶け出します。これを脱灰といいます。 それでも自然に食後30分から1時間後には、今度は唾液中からこれらのイオンが歯に戻ってきます。これが再石灰化です。口の中では絶えずこの脱灰と再石灰が行われています。 歯の表面から脱灰が起こる現象は厳密に言えば個人差があります。つまり歯の質によって溶け出す酸性度が違うのです(虫歯菌が酸を作っていくので、口の中は酸性に傾きます)。 フッ素は歯の質を強化することで、脱灰に対する抵抗力を高める効果があります。モース硬度の比較で、エナメル質よりセメント質の方が歯の脱灰が先に起こりやすくなります。 年齢とともに歯周病などで歯茎が下がりセメント質が露出した場合、「根面う蝕(しょく)」になりやすくなるので、この場合にもフッ素はかなり効果的です。 2017年3月から歯磨き剤のフッ素濃度が1500ppmに引き上げられ、世界基準と同様になりました(それまでは1000ppmが上限)。高齢者こそ、フッ素を生活に取り入れてほしいと思います。(長堂芳子 長堂歯科医院=那覇市)