『鬼滅の刃』遊郭潜入編のここに注目! 戦いの中で成長する炭治郎と上弦の鬼の強さ
『鬼滅の刃』でも屈指の激しさを誇る堕姫VS炭治郎の戦闘シーン
一方、堕姫という鬼もなかなかに強烈なキャラクターだ。吉原の遊郭で最上位の花魁ということになっているだけに美しいが、性格は峻烈で禿(かむろ)として付いている子供たちにも平然と暴力を振るう女性として登場。沢城みゆきによる高慢さと残忍さを強く感じさせる声とも相まって、炭治郎がそれまで相手にしたことがない禍々しさを持った鬼としての存在感を放つ。 本性を現してからは、鬼としての攻撃力も発揮してくる。さすがは上弦といった強さを見せる堕姫と炭治郎が、遊郭の路地や建物の屋根の上で繰り広げる戦いは、次から次へと帯を繰り出し、炭治郎を切り刻もうとする堕姫の攻撃の手数も凄まじければ、奥から手前へ、手前から奥へと移動しながら剣を振るい続ける炭治郎の速度も凄まじい。『鬼滅の刃』シリーズの数ある戦闘シーンでも上位に入るだろう攻防を楽しみたい。 とはいえ、そこは「柱」ではない一介の隊員に過ぎない炭治郎では荷が重く、危地に陥ったところで駆けつけるいくつかの救援の手が。とりわけ音柱・宇髄天元が見せるまさに真打ち登場といった剣戟が、『遊郭決戦編』では本格的に繰り広げられる。さらに、堕姫の首を落とせば終わりとはいえなかった戦いが、より凄惨なものとなって炭治郎や宇髄天元を追い詰めていく展開も待っている。 その過程では、不幸な身の上に生まれ、愛されることを知らずに育った子供たちがたどる悲痛な運命が慟哭を誘う。人は鬼として生まれてくるのではない。鬼にならざるを得ないことがあって鬼になる。そんな鬼に炭治郎が示す優しさにも、改めて出会うことができるだろう。 ほかにも『遊郭潜入編』で目を見張るところといえば、吉原の遊郭で花魁が暮らす部屋の美術設定か。整った調度品といい美しいふすま絵といい、最高峰の花魁を置くに相応しい美麗さを持っている。ufotableの精緻な仕事ぶりが表れたものだが、ここから苦界に身を置く女郎がどれだけの経験を経てその部屋を持てるまでになったのかを想像し、吉原という街が持つ闇の部分にも関心を向けてほしいところだ。 ほかには、猪のマスクを外し女装のために化粧をした伊之助の美しさや、音に敏感な善逸が見せる楽器演奏の意外な才能にも注目か。そうした数々の楽しみどころを味わい『遊郭潜入編』『遊郭決戦編』を観て、『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』も劇場で改めて鑑賞して、自身の内部の“鬼滅の刃熱”を高めながら、春に放送が始まる『柱稽古編』を待つ。そんな過ごし方がしばらくの間できそうだ。
タニグチリウイチ