テイラー・スウィフト東京ドーム公演初日、時代を彩るポップスターの止まらぬ進化
海外女性アーティストとしては初となる東京ドーム4連続公演のために来日中のテイラー・スウィフト。先日行われた第66回グラミー賞授賞式にて、アーティストとしては史上初となる4回目の最優秀アルバムを受賞(『ミッドナイツ』)したことでも大きな話題となっている彼女の受賞後初となるコンサートとなった来日公演初日オフィシャルレポートと写真が到着した。 【写真をすべて見る】TAYLOR SWIFT | THE ERAS TOUR 東京ドーム公演 テイラー・スウィフトの3回目となる東京ドーム公演が2月7日に初日を迎えた。海外女性アーティスト初の東京ドーム4連続公演は、全て完売。しかも来日直前の2月4日(日本時間5日)にグラミー賞でアーティストとして史上最多となる4回目の最優秀アルバム賞を10thアルバム『Midnights』で受賞したばかりという、最高のタイミングでの実現となった 今回の『THE ERAS TOUR』は、昨年3月に全米でスタートした。ファンの間でコスプレが流行し、この日も大胆なコスプレを楽しむファンはいたけれど、それよりも驚いたのは観客の多国籍ぶりだった。今までも海外からの観客はいた。テイラーの前回公演もそうだった。でも、今回はその人数も国の数もまるで違う。ちょっと大げさに言うと、私の周りは外国語しか聞こえなかった。その様子からも国を超えて人々を夢中にさせているテイラーの影響力がうかがえた。 さて、『THE ERAS TOUR』は、冒頭のMCでテイラーが「この18年のEra(=時代=作品)を一緒に楽しみましょう」と呼びかけたように、1stアルバムを除く9枚のアルバムで構成されている。とは言っても、よくあるオールタイムヒッツのようなライブではなく、楽曲をアルバムごとに衣装もセットも演出も変えながら演奏していく。その1stセクションに選ばれたのは、コロナ禍でツアーを断念した2019年のアルバム『Lover』だった。 ここから時間軸とは関係なく、『Fearless』、『evermore』、『reputation』、『Speak Now』、『Red』、『folklore』、『1989』と続き、2曲のサプライズソングを挟んで、最後は『Midnights』となった。 日本でも昨年10月に公開となった『THE ERAS TOUR』のコンサート映画は、観ていたけれど、実際目にしたステージは、デザインがより凝っているように映った。正面に大きなメインステージがあって、巨大ヴィジョンの左右にバンドとコーラスがいる。そして、メインステージ中央からアリーナの真ん中に長く張り出したスラストステージがあって、その先端がT字型になっている。そこから広めのダイヤ型ステージがつながっていて、主にそこでパフォーマンスをするのだが、せり上がりの可動式ステージなどさまざまな仕掛けがある。 オープニングではダンサーが手に持っていた大きなカイトのような布で、スラストステージの床を覆い隠して開けると、テイラーがファンタジックに登場して、「Miss Americana & The Heartbreak Prince」を歌った。作品ごとに個性があって、『reputation』などはエッジが効いているが、全体を通して“ファンタジー”がひとつのキーワードになっていたと思う。 そして、2曲目の「Cruel Summer」から早くも大合唱となった。5万5千人の大合唱は、2008年の2ndアルバム『Fearless』のセクションでも起きた。「You Belong With Me」で歌い、「Love Story」のイントロでもすぐに大歓声が沸き上がった。2015年の東京ドーム公演ではなかったことだ。新しい観客も古い曲をよく知っている。2010年の3rdアルバム『Speak Now』でも同じだった。これもテイラーズ・ヴァージョンの効果なのだろう。 5曲目の「Lovers」ではピンク色のアコギで弾き語り。このアコギの弾き語りは、「Long Live」や「betty」など随所にあって、そのたびに衣装に合わせてギターの色が変わったり、また中盤の「All Too Well」は10分超のフル尺で演奏された。弾き語りはテイラーの原点だ。ダンサーと一緒に華やかに踊るパフォーマンスは、ポップスターだけれど、弾き語り、とりわけギター&ベース4人とのパフォーマンスが良かったけれど、そこではミュージシャンの顔になっていた。 3番目のセクション『evermore』から気付いたのは巨大ヴィジョンの映像とステージの巧みな一体感だった。森の映像に目を奪われていると、いつの間にかステージに木が現れていて、幻想と現実の境が一瞬消える感覚に襲われる。この“いつの間にか”も随所にあって、映像に注目していると、いつの間にかダンサーが消えていたり、反対に自転車で登場したりと、あまりにいろいろあるので、見逃したくない思いがどんどん募っていった。そして、「willow」では緑色のマントを羽織り、光るボールを持ち、ダンサーと円陣を組むパフォーマンスは、ファンタジーだった。 また、このセクションのMCでグラミー賞の話に触れる。ファンに感謝しつつ、もし受賞スピーチをするならば、新作『THE TORTURED POETS DEPARTMENT』のことを明かそう。でも、それがなかったら、東京ドームの初日に解禁しようと決めていたと言う。さらに『Midnights』の曲を書き終えた後、すぐにまた曲作りを始めて、全米ツアー中もアルバムを制作していたとも話す。もうどれだけ創作のアイディアが溢れ出てきているのか。 パフォーマンス全体の印象としては、スラストステージ上の可動式ステージが大活躍だった。『reputation』などではパフォーマンスをよりパワフルなものにしていたし、同時に遠くの席からも見える工夫になっていた。その工夫はこれに限らず、それぞれの席で楽しめるものが用意されていた。たとえば、スラストステージの床に映し出されたギターの絵などは、スタンド席じゃないとよく見えない。テイラーと20人弱のダンサーが一体となった最後の曲「Karma」などは、正面の席だったらもっと迫力を感じられただろうとは思ったけれど、反対に私がいた一塁側だからこそ見られたものもあった。ただサプライズソングの後、まるでプールのように床に飛び込むマジックに注目していたので、その謎解きが私の位置では出来なかったのは残念だった。 そのサプライズソングは、公演ごとに変えられていて、この日は、ライブで初めて演るという『Midnights(3am Edition)』からの「Dear Reader」と、『Red』からの「Holy Ground」は、アップライトピアノの弾き語りだった。 前述したようにセクションごとに衣装チェンジをするのだが、その時間が2分もなく、すぐに戻ってくるので、間延びした感じがなく、いい興奮と緊張感が最後まで続いた。定刻に始まった全45曲、3時間20分のライブは、常識破りのチャレンジであり、半端ない体力が求められるものだけれど、全てが完璧だった。そのなかで18年間のテイラー・スウィフトのアドベンチャーを存分に楽しめた。その時どきに表現したいことを音楽にしていて、トレンドに迎合したことはないのに、こんなにも多彩なアルバムを作ってきたのか。これも偉業である。 3時間強なのにまだ観たい気持ちと、超一流の素晴らしいものを体験した満足感が入り混じった余韻がまだ続いている。彼女はどこまで進化を続けるのだろうか。しばらくはテイラー・スウィフトの時代が続くはずだ。 文:服部のり子 ■新作情報 テイラー・スウィフト『THE TORTURED POETS DEPARTMENT』 2024年4月19日発売 予約受付中 ■来日公演セットリスト公開中 <Lover Era> Miss Americana & the Heartbreak Prince Cruel Summer The Man You Need to Calm Down Lover The Archer <Fearless> Fearless You Belong With Me Love Story <evermore> ’tis the damn season willow marjorie champagne problems tolerate it <reputation> Ready For It? Delicate Don’t Blame Me Look What You Made Me Do <Speak Now> Enchanted Long Live <Red> 22 We Are Never Ever Getting Back Together I Knew You Were Trouble All Too Well (10-Minute Version) <folklore> the 1 betty the last great american dynasty august illicit affairs my tears ricochet cardigan <1989> Style Blank Space Shake it Off Wildest Dreams Bad Blood <Surprise Songs> Dear Reader *Midnights (3am Edition)より Holy Ground *Redより <Midnights> Lavender Haze Anti-Hero Midnight Rain Vigilante Shit Bejeweled Mastermind Karma
Rolling Stone Japan 編集部