久石譲さんが音楽監督に就任 日本センチュリー交響楽団の「未来」描く鍵は伝統と現代性
演奏会の基本方針として示したのは、クラシック音楽の伝統と現代性の融合だ。会見の場で発表された令和7年度の定期演奏会(全8回)のプログラムは、毎回ベートーベンやシューベルトらが作曲した古い作品と、久石さん自身の曲を含む1950年以降に作られた作品とで構成されている。
その狙いについて、「現代音楽だけを演奏するコンサートをやっているケースは多いが、現代音楽が好きな人しか来ない」と久石さん。「きちっと過去からつながって現在があり、現在から未来につながる(演奏会にする)」。クラシック音楽の歴史とたゆまぬ変化を、定期演奏会という楽団の日常の活動の中で触れてもらう趣向だ。
桜井理事長からは世界進出を期待する言葉も飛び出たが、記者からそのロードマップを描けるか問われた久石さんは、「今は無理ですね。西洋音楽だから、向こう(西洋)で演奏している人たちを凌駕するのは、そんなに簡単じゃない」ときっぱり。
ただ、「このオケはクラシックの伝統を持っている。それを引き継ぎ、現代性と合わせて両輪になるようにきちんと運営していく」と静かに語った。その言葉には、確かな戦略と、日本のクラシック音楽界の未来を背負う決意がにじんでいた。(渡部圭介)
◆久石譲(ひさいし・じょう)
昭和25年生まれ。国立音楽大在学中、同じような旋律を反復する「ミニマルミュージック」に興味を抱き、現代音楽の作曲家として活動を始めた。2023年にドイツのクラシック名門レーベルから出した初のCD「A Symphonic Celebration」は米ビルボード・クラシック・アルバム&クラシック・クロスオーバー・アルバム・チャートで2度の1位を獲得。「風の谷のナウシカ」(昭和59年)「となりのトトロ」(同63年)などの音楽を担当したことでも知られる。近年は指揮者としても活動している。